プロ独女のライフハックブログ

BBA独女みつまるが「今」気になることを追いかけ綴る人生冒険日記

【映画部】「美術館を手玉にとった男 」ART AND CRAFT 感想・考察~嘘つきで純粋な本物の芸術家がいた

お題「最近見た映画」

美術館を手玉にとった男(字幕版)

これ実話であり、ドキュメンタリーなんです!

雰囲気あるいい役者さんが主演だなぁ…って思ってたら

全米を騒然とさせた贋作師本人だった!!

 

 

しかし、このドキュメンタリー映画を見ていると

何が嘘なのか?

芸術とはなにか?

絵画の価値とは何なのか?

など、いろいろなことを考えさせられました。

 

現代に生きるゴッホのような偉大な芸術家の

生の声と活動を追った歴史的な記録映像になるかもしれません。

このチャンスを見逃さずに彼の姿、活動、言葉を心に記録してきましょう。

 

 

美術館を手玉にとった男(字幕版)

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美術館を手玉にとった男・マークランディス

美術館を手玉にとった男(字幕版)

この男性こそが

全米20州、46館の美術館を騙した

贋作師マーク・ランディス本人である。

 

贋作というと「有名芸術作品」の偽物を制作し

大金を騙し取るというイメージがある。

贋作の目的は「金」もしくは自分の芸術能力誇示だったり

美術専門家・評論家への挑戦しか思い浮かばない。

 

ところがマーク・ランディスの贋作活動は

特殊であり、目的は金でも自分の腕前誇示でも

有名になる事でもなく、全く別にあるのだ。

 

18才の頃 1年以上も精神施設にいた彼は

今もカウンセリングに通い薬を飲みながら

贋作を描いては牧師になりすまし絵を寄贈して歩いている。

 

彼の絵に騙されたことに気が付いた美術館職員は

ランディスを追い続け、その執念が意外な形で

彼とランディスを再会させる。

 

ランディスと彼を追うモノ、彼の活動に興味を持った人達の

姿を追ったドキュメンタリー映画がこの作品です。

 

2011年に発覚した極めて特殊な贋作事件

2011年アメリカの多くの美術館で

展示されていた大量の絵画が贋作であることが発覚!

 

しかし、この事件は極めて特殊な贋作事件で

この贋作師を巡り事態は思わぬ展開に発展していくことに…

 

全米20州46館の美術館を騙した男

マーク・ランディスは精巧な贋作を自ら100点以上制作し

それらを無償で寄贈し続けていたのだ。

 

彼は長年にわたり

など幅広いスタイルの絵画を模倣し続けてきた。

その腕前は相当なもので

だからこそ46館もの美術館が「本物」と信じ展示していたのだ。

 

そんな本物そっくりの贋作を「金」に変えることなく、

ランディスは神父や資産家など様々なキャラクターに扮して

美術館に作品を寄贈しているのだ。

 

彼はこの活動を「慈悲活動」とよんでいる。

新聞記者もFBIも彼の活動を追うこととなったが

彼が起訴されることは無かった。

 

なぜなら彼は「絵画を無償で寄贈」してきただけで

罪に問えないとの結論いたったからだ。

 

専門家なのに贋作を見抜けなかったということで

美術館側が大恥をかいただけの事件ともいえる。

 

ランディスを追い続ける元美術館職員

 ランディスの贋作が多くの美術館で本物として展示されていることや

ランディスという奇妙な贋作師の存在を世に知らしめるきっかけとなったのは

元美術館職員のレイニンガーだ。

 

レイニンガーもランディスに騙されたひとり。

彼は自分が受け取った寄贈作品が偽物だと気が付いてから

ランディスを追い続けてきた。

ランディスに夢中になるあまり

つとめていた美術館から解雇されたのだ。

 

レイニンガーはランディスを追う中で

全米の多くの美術館に

ランディスの贋作が多数転展示されていることに気が付く。

 

レイニンガーは新聞記者や美術館職員時代のつてを使い

ランディスをとめるために動き、

ついにランディス活動は大手新聞社やメディアで話題となる。

 

ランディスの奇妙な活動と精巧な贋作は注目され

美術館でランディス展が開催されるまでに。

この展示に向けランディスにカメラが密着して

このドキュメンタリーができた。

 

ランディスに執着するように追い続けた

レイニンガーだが、ランディスに再会した時

ランディスの中に彼の存在は無きにひとしく

なかなかせつないモノがあった。

この「せつなさ」は多くの人がどこか共感してしまうものがあるはず。

 

「オリジナルなんてない、全て元ネタがある」

こう話すランディスが模写をはじめたのは8才の頃だという。

彼の両親は旅行好きでランディスは旅先の

各地の美術館に連れて行ってもらったそうだ。

これがきっかけで絵画に興味を持つように。

 

若い両親はランディスを家に残し

2人で夜デートに出かけることも多く

ランディスは1人の時間ずっと模写をして過ごすように。

 

美術館で買ったカタログに紙を重ね

線を何度もなぞる。

うまく描けるまで繰り返す。

カタログの写真だけでわからない部分は

“想像力で補えばいい”と彼は話す。

 

彼は精神病施設での医師の診断にもあるように

「長時間記憶して細部を描きだす、そういう能力に長けているんだ」

と自分の能力について話す。

 

ランディスと父

ランディスが自分の活動に対して

「私は何も犯していない」という意識を持ち

慈悲活動と呼ぶその根本にあるのは

両親との関係と影響にある。

 

ランディスが父から受けた影響はとても大きい。

彼の中に紳士だった父と酒におぼれ凶暴になった父の2つの像が残っている。

ランディスが父を通して学んだこの世界の法則は残酷だ。

 

“倫理的行動は常に成果を生む”

というセリフがある。

でもそれはジョークで成果を生まない。

 

父は紳士だった。

だから出世しなかった。

父と私は正反対で、父にとって私は残念な存在だ。

 

父のような人(Good People)は商売人になれない。

 

ドキュメンタリーの中でランディスはこう語っている。

 

善き人である父が「よき人」であるが故に報われない

そうした世の名の仕組みを子供ながらに悟り

金と権力を持つ人たちがどういった人間なのかも同時にわかっていた。

 

そして「善き人」で紳士だった父について

ドキュメンタリー後半ではこう語っているのだ。

 

“父のようになるのが不安なんだ“

たばこや酒におぼれて暴力的な人間になるのはイヤだ

 

紳士で「善き人」だった父が

どうして壊れていったのか?

それがわかっているからこそ

ランディスは自分が父のように壊れないように

この嘘と欲でまみれた世の中で慈悲活動を続けているんだろう。

 

ランディスと母、母に捧げる慈悲活動

父にとって残念な存在の自分

という自覚があったランディス

 

その逆に最後まで自分の側にいてくれた母への

思い入れは大きい。

母がこの世を去ってからはより慈悲活動に力を入れてる。

 

ランディスが自分の模写の才能を生かして

慈悲活動を始めたのは

「父をしのぶ行いをして、母を喜ばせたかった」

とその理由を語っている。

 

多くの人が日曜学校で「才能を活かしなさい」と教えられる。

だから自分もやっている、と彼は言う。

彼は母の車に乗り、牧師になり慈悲活動を行っている。

時には資産家のふりをすることも。

 

母を喜ばせるためにはじめた活動が

今は母の死から立ち直るための活動になっている。

 

結局この世は嘘ばかり、だから「良心を規範にすべき」

ランディスは紳士だった父に憧れると同時に

映画「泥棒貴族」で見た金満収集家にも興味を持っており

『こういうパトロンに私は憧れてた』とも語っている。

 

 

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周りの子供達は「クールだ」と芸術家に憧れたが

ランディスは金満収集家に惹かれていたのだ。

父が手にできなかった「成功」を手にした人間であり

その金満収集家が求める「芸術」に興味が向いたのだろう。

 

出世できなかった父と金満収集家

金満収集家が求める「芸術品」

ランディスはその金満収集家が求める名だたる「絵画」を

精巧に模写しつくり出す才能を持っていたのだ。

 

自分が価値あるモノを生み出せると気が付いたのかもしれない。

彼は自分の慈悲活動について

「私は何も犯していない」と語っている。

 

そもそもこの世界は嘘に溢れているから。

“結局、聖ペテロも嘘をついていたろ”

だから、嘘の世界の何を信じて生きていけばいいかというと

「良心を規範にすべきだ」と彼は言うのだ。

 

彼はこの嘘で溢れた世の中で

自分の良心に従い、自分の才能をいかし

世の中の役に立とうとしている。

 

ランディス展に集まった美術関係者たち

驚いたことに

ランディスのこれまでの活動や作品を展示した

大規模な彼の展示のオープニングパーティー

集まったメディアや美術関係者や著名人たちは

会場に現れたランディスのに向かって

皆がこう言ったのだ。

 

「自分の作品を作るべきだ」

 

展示作品の中には

ランディスのオリジナル作品もあって

彼の名のサインもしてあったのに。

彼は若い頃の母を描いた絵に思い入れがあった。

その大事な作品も展示しているのに

誰も見ていないし、気が付いていないのだ。

 

「自分の作品を作るべきだ」と言われるたびに

「オリジナルの作品も展示してるよ、あの女性の絵がそうだよ」

と答えるランディスの気持ちがどんどん曇っていく様子に

胸が痛い(;;)

 

結局、芸術なんて誰もわかっていないし

ちゃんと見てもいないんじゃなかろうか?

 

作者が誰で、この作品の価値はいくらで、

その作者にまつわる物語にしか

人は興味が無いのかもしれない。

 

嘘つきで純粋な本物のパフォーマンス芸術家

彼が作る贋作よりも

彼の慈悲活動自体が歴史に残すべき

「パフォーマンスアート」だ!

 

ランディスは自分のことを本物の芸術家とは思っていない。

本物の芸術家ではないが、そうなりたいし、そう在りたいと思っている。

 

才能がどうであれ

人は皆、役に立つ人間でありたいと思う

これがわたしができる最大限のことだ

という彼の言葉が刺さる。

 

彼は今新しい慈悲活動を始めている。

「紛失や盗難にあった芸術品を持主に返す」

 

“私にできることは、小さな絵を描くこと

なくなった本の1ページを元の本に戻せたら素敵だろ”

 

嘘と金銭的価値で支配されてしまった世界はたくさんある。

芸術も今や金持ちの支配下にあり、

投資や資産隠しなど「価値の保存場」であり錬金場と化している。

 

そんな中で彼の絵画への向かい方は

純粋で本物のアートじゃないだろうか?

このドキュメンタリーで

生の彼の声、言葉に触れることができたのは

とても幸運なことかもしれない。

 

「すべての政府は嘘をつく」で描かれているように

人の命を奪う嘘を権力者たちは平気でつく。

 

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そういった嘘が許される世界なんだから

ランディスの行動は「慈悲活動」として許されるのかも。

 

それよりも

世の中は私たちの想像を超えて

贋作だらけなのかもしれないという方が気になった。

 

今日も彼は絵を描きつづけている。

長期にわたり「集中して継続」することが及ぼす結果に

驚きとなんだか嬉しい気持ちも。

 

自分の良心を規範に生きよう。

 

では、また~☆

 

 

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真贋の世界: 美術裏面史 贋作の事件簿

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