久しぶりに骨折した時以来のじわじわくる苦痛を感じた映画「RAW」
サイコ・ホラー・グロイドキュメントなんでも平気な私も感情の前に
身体が無意識の反応したのかめまいのような吐き気がした作品。
派手なグロでも恐怖でもなく
ただただじわじわくる・・・自分の感覚でも認識していないのに
先に体が反応する方の吐き気がきた珍しい作品。
車酔いとかに近いです。
ちゃんと座ってみていられなくて
横になって観てました。
それでも意地でも観たいのだ。
このポスターだと洗練された美人ですが
作中ではもっと自然と少女です。
ヨーロッパの少女らしく
白く細くてガリッとした体型も
よりこの作品のいいスパイスになっています。
妖艶な大人っぽい少女でないところが
よりこの「カニバリズム」への本能的目覚めが
観ているこちらの脳にひたひた染み込んできます。
では、また気になったことなど
つらつらと書いていきます。
脳よりも体の方が先に反応する吐き気をもよおす映画
いろいろ
カニ場映画あると思いますが
だいたい脳で理解できる範囲の内容が多いんですよ。
あと喰う側の人間が
自分で好んで食っているので
わかりやすいんですよ。
「喰うぞ」と思って食ってるから。
しかも本人たちがそういった嗜好に走るようになった
心理も理解できる範囲の話が多い。
だから一応脳で理解しながら見ているので
気持ち悪くなることってないんですよね。
しかし、この映画は違います。
大学の獣医学部に入学した新入生である主人公は
ベジタリアンの少女なんです。
両親ともに獣医師で両親の母校に入学。
1つ年上の姉も先輩にいるという環境。
そして大学で寮生活がはじまります。
狂った学生寮生活の中で目覚める本能
この大学での生活がね、狂ってるんですよ。
彼女ではなく彼女以外が、全部、みんなおかしいの。
学校でも寮でも
先輩たちの独裁恐怖政治のような世界。
新入生は動物の血を頭からぶっかけられ
ウサギの生の肝臓を食わされ
ペンキをぶっかけられ交尾しろと命令してくる。
なんだ、この学校・・・
1年前に入学した姉もすっかり染まっちゃって・・・。
ベジタリアンで優等生の彼女は
ウサギの生肝臓を喰わされたことで
全身にアレルギー反応でたのですが、
もっと深いところに生じた異変を感じ始めます。
まずは「肉」を食べる事への執着が生まれ始める。
夜中に冷蔵庫にある鳥のささみを生のままむさぼり・・
常に腹が減っている。
ルームメイトは同性のはずが男性で
「俺はゲイだから大丈夫」といって男を連れ混む。
彼女は男性経験もないまっさらな少女として描かれている。
目覚め後とのコントラストの高さを出すためかも。
先に目覚めた本能は「肉食欲」
この本能的な目覚めの段階が興味深いんですよね。
↓
ウサギの生肝臓を喰わされたことで
肉を食べたい欲にかられるようになる
↓
女としての目覚め前の妹のVラインのブラジリアンワックス脱毛を
してあげる姉。
この時妹が暴れたハプニングで姉が指をはさみで切断してしまう。
姉が気絶。
救急車に電話する妹。
「切断した指を途にかく氷で冷やして姉と一緒に救急車に乗せる」ように指示される。
↓
慌てて氷を探す中で
姉の指から下たる血を
衝動的になめてしまった妹。
↓
気がついたら
姉の切断された指の肉をかじり
むさぼり喰っていた。
気絶から目覚めた姉はそんな妹の姿を見つけていた。
↓
ここから一気に「人肉欲」に目覚めていきます。
そしてその欲求はどうやらルームメイトの男へ向かうのです。
彼女が鼻血を流すシーンとうのは
友人らとバスケを楽しむ彼を見つめている時に
自然と捕食への興奮から出てきた血でした。
常に人を喰いたいわけじゃなく、
・性的興奮とその人を喰いたい欲がリンクするらしい
・血やその肉の味を口にすると抑えが効かない程喰いたくなるらしい
・泥酔すると喰いたくなるらしい
つまり理性が働いている時はその欲を抑えられるけど
性的興奮、実際に口にした時、泥酔時など理性のコントロールが効かなくなる時
無性に喰いたくなるらしい。
本能では常に飢えているようだ。
まー食べる機会も食べていい人間もいないからね。
先に覚醒していた姉の変貌
妹はめちゃくちゃ葛藤していた。
自分がおかしくなっていくのはわかっている。
姉に姉の指を喰っているところも見られた。
ルームメイトの男に欲情し
身体を合わせながら必死に更なる欲を抑える彼女。
彼を喰わぬように自分の腕を噛んで必死に耐える。
妹の目覚めに気が付いた姉は
彼女に今後どうすべきか教えた。
姉は道路のわきに身を隠し
通りかかる車の前に飛び出して
車が電柱にぶつかって事故を起こしては
息絶えた運転手や助手席の人間の肉を食っていた。
慌てて遺体から引き離す妹に姉は「あんたの為に教えてやった」と。
姉も1年前に目覚めていたようだ。
この大学付近ではこうした交通事故が多発してた。
この食欲に理性は太刀打ちできないようである。
もともとベジタリアンであった姉が1年でこうなった。
自分も・・・と思い始めただろう。
今までのカニバリズム表現との違い
「そこに至るまで」の理由に納得できるものが多かった。
文化的なモノ、心理的なモノ、環境的なモノいろいろあるけど
今回は主人公も動揺しているように
観ているこっちも本能的欲求の威力のすさまじさに動揺させられる。
今まで描かれてきたものは
欲求に似せた「欲望」によっての行動が多かったが
今回の少女は完全に本能的欲求に動かされてた。
あの抑えの利かない本能的欲求の強力さに恐怖を感じさせる作品。
うまーく人は本能を眠らせているけど
本能が目覚めた時
まったく自分の意思で自分をコントロールできなくなるのかも。
という怖さにさらに追い打ちをかけるのが!!!
この姉妹のこの目覚めは「血」によるものだという事。
母親からの遺伝。。。。
ラストの父の言葉に
姉妹の覚醒も覚悟であの大学に送り込んだのかと思うと
もっとゾッとするわ・・。
父なりに娘たちを思ってのことだろうけど。
本能的欲の解放条件は食欲も性欲もつながってるようだ。
絶頂期に自分が何を見るか?見ているか?
何を強く求めているか?
どんな感情に包まれているか?
注意深く自分を観察してみるのも大事かもしれません。
では、また~肉を食った後に見ない方がいい映画でした。