日本で当初公開時の邦題が「怪物園」だったようです。
30年間も上映禁止されていた作品を偶然Amazonプライムで観ることができました。
見世物小屋+移動式サーカスの一団が舞台の映画です。
大人になって観て良かったと思える作品。
この映画に登場するフリークス(奇形の人たち)は
- シャム双生児の姉妹
- 小人症の男女
- 小頭症の女性達
- るいそう
- 四肢欠損の男性
- 両腕欠損の女性
- 下半身欠損の男性
などなどみんな役作りではなく本物であり
当時本当に見世物小屋で活躍していた人達です。
彼らが本物であることで
作品のメッセージがダイレクトに見る人に刺さる。
- フリークスと健常者が一緒に働く見世物小屋一座
- 人の心の弱さも醜さもむき出しに描かれていく
- 強欲・銭ゲバ・色ボケ・裏切り・侮辱・復讐と制裁
- 人は誰もが誇り高く生きている!
- 「可哀そう」という薄い同情は返って危険
フリークスと健常者が一緒に働く見世物小屋一座
見世物小屋というよりもサーカスの要素が強いので
エレファントマンのような「その異形の容姿を見世物として見せる」
といった扱いではないのです。
フリークスと呼ばれる団員もみなそれぞれに
自分の持ち演目も持っていて
それぞれに才能を活かして観客を楽しませているのです。
ソフロやヴィーナスといった健常者の曲芸師も一緒に一座で働いています。
みんながそれぞれにプロの曲芸師であり
みんながそれぞれ自分の力で人を楽しませ稼いでいます。
みんなが仲間。
そんな一座ですがやはりそこは男と女、欲望が渦巻くのです。
基本的にみんな友好的ですが
やはり「フリークス」と呼ばれる人たちの仲間意識は更に強いのです。
人の心の弱さも醜さもむき出しに描かれていく
小人のハンスは同じく小人のフリーダと婚約中。
でもハンスは一座きっての美貌クレオパトラにどんどん心奪われていくのです。
フリーダがいつも悲しい目で見つめている(;;)
クレオパトラはハンスの好意に気が付いていて
色々高価なものをねだっては貢がせるというよくいるタイプの強欲女。
ハンスが莫大な資産を相続したと知るや強引にハンスと結婚を決めるクレオパトラ。
そんなクレオパトラは怪力男とデキておりまして
結婚後にハンスを殺す予定まで立てている。
結婚パーティーで一座のみんなが祝福してくれる中
ハンスのワインにさっそく毒をしこむ鬼嫁クレオパトラ。
もうハンスの金を自分のモノにした気でいるクレオパトラは酔って
ハンスやみんなの前で怪力男と熱いキスを・・・。
ハンスがバカにされていることに耐え切れずハンスの元婚約者フリーダは涙の退場。
更にハンスの嫁になるということで
一座の中でもフリークス団のメンバーが「仲間と認めるわ」と
みなが口をつけ飲んで回してきた仲間の杯を叩き落とす!
「私があんた達みたいな醜い生き物の仲間になるわけねーだろ!」
と言い放ち自分の小屋に帰ってしまうのです。
仲間もハンスもこの時、気が付きはじめるのです。
あいつ・・・・。
そして祝いの酒に仕込まれた毒で倒れてしまうハンス。
俺の嫁・・・・。
更にベッドで寝たきりになるハンスに毒を盛るクレオパトラ・・。
その様子をいたるところからのぞき監視する仲間たち。
強欲・銭ゲバ・色ボケ・裏切り・侮辱・復讐と制裁
もういろいろてんこ盛り!
異性を惹きつける容姿と健常者の身体を持っていますが
ホントに中身が欲のまま発酵しているタイプ。
物欲、金銭欲、支配欲、優越感の塊。
人を殺しても金が欲しいという・・・どうしようもない奴ら。
とはいえ、ハンス(小人症の資産家)だって!
ハンスを支え、愛し心配してくれる優しい婚約者を
無下に捨てる男なんだぜ。
どうなの?! こっちもクズやないかーーー
婚約者フリーダの目の前で
クレオパトラに花束やプレゼント渡してるし!!
資産を相続したことで一気に「男としての自信」みなぎっちゃって
それまでの苦労時代を支えてくれた彼女を捨てるという・・典型的なクズや!
クレオパトラの企みは
フリークス仲間によって阻止され
裁かれます。
割と容赦ない罰を下す彼ら。
最後のシーンに出てくるクレオパトラの姿にはビックリした。
人は誰もが誇り高く生きている!
この映画は、観はじめこそ登場人物の容姿や外見に目がいくのですが
どんどん醜く見えてくる・・という不思議な作品です。
感情のフィルターって影響力大きいと実感。
クレオパトラたちはクズですが
フリークスvs健常者という描き方はされていないのです。
むしろヴィーナスたちはずっとフリーダを励まし
ハンスを守ろうともしていますからね。
容姿のもつインパクトや影響力って確かに大きいのですが
見世物小屋一座はみんな自分を受け入れ自分の活路を見出し
誰もが誇り高くいきていました。
ただフリークスへの偏見も常づね感じているからか
「1人への侮辱は全員への侮辱」という彼らなりの掟があって
クレオパトラはその全員への侮辱罪により
彼らに裁かれたのです。
どんな人間も「侮辱」が一番ゆるせないものなのです。
「可哀そう」という薄い同情は返って危険
この映画を見た人のコメントを読んでみて知ったのですが
日本にもかつてこういった見世物小屋や小人プロレスあったそうですが
批判の声があがりなくなっていったそうです。
でも当の本人たちは「プロとして客を楽しませている」と言ってたと。
誇りをもってやってきた自分の仕事場を失い結局は苦労する羽目に・・・。
この映画に出演しているフリークス役の方々も
当時ショーで活躍していたスターだったそうで
稼ぎはすごかったようです。
遠くから「可哀そう」と眺めないで
すぐ横に座ってじっくり話をすれば
「立派に誇り高く生きている人」とわかるのかも。
この辺が今ならわかるんだけど
子供の頃やもっと若い時だったら
私もわからず批判者になっていたと思う部分。
「可哀そう」と思い相手を見ることは
自分が相手を無意識に下に見ているよね。
フリーダの愛がめっちゃでっかくて優しくて圧倒された。
私だったらあんな浮気とあんな裏切りされたら許せないわぁ。
私はまだまだ「許し」の容量小さ目です。