戦争で戦う者たちは その攻撃が「何を破壊しているか?」
本当にわかっているのだろうか?
私たちもまた彼らと同じように暗中模索+疑心暗鬼の中を生きているのかも。
そんなことを考えさせられた潜水艦・密閉狭所空間サスペンスです。
映画 ビロウ~あらすじ
第二次世界大戦下の1943年8月
大西洋上にあった米軍潜水艦にある指令が入る。
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”ドイツ軍に撃沈されたイギリスの病院船の生存者を救助せよ”
現場に向かい生存者3名を救助したが
その中に1人、女性がいたのだ。
当時”女性を潜水艦に乗せると不吉なことが起こる”と信じられており
乗組員たちはザワめいく。
救助され船内唯一の女性となったオリヴィアは看護師で
一緒に救助された重症者の看護にあたるが
その一人が敵である「ドイツ人」と分かると
艦長代理を務めるブライス大尉により射殺されてしまう。
オリヴィアは「この人にも家族がいる」と訴えたが
ここでは彼女の話に聞く耳を持つ者はいない…
不吉な存在である彼女はこの艦内で疎まれる存在となっていた。
そんな中、次々と艦内と潜水艦を取り巻く海中で
不可解な現象が起きはじめ
不吉で不気味な声が艦内に響き渡り…
※以下、ネタバレ有の感想となります
◆隠ぺいされた重大な過失
ここがね、凄い「モヤモヤ」湧いてくるポイントです。
オリヴィアと共に救助された重症者が
「ドイツ人」と分かるや否や敵として銃殺され
その後、死体をイタズラの道具にするアメリカ軍の兵士たち…
これが「隠ぺいされた重大な過失=罪」と対になってるのです。
オリヴィアの訴えが重要な鍵となっており
「この人にも私たちと同じように帰りを待つ家族がいる」と。
敵国の船を撃沈すれば栄誉と称賛が与えられ、
その撃沈させた船が実は同盟国・味方の船と分かると大罪を問われる。
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「ここ」、
ここに戦争とか争いの根源的な問題がある気がして
すごく引っかかってました、私。
大量破壊・大量殺人に於いて
同じ結果なのに栄誉が与えられる場合と大罪に問われることが
紙一重に存在しているわけです。
モヤモヤ…本質的に破壊と殺人が招く結果って
「人類にとってのマイナス」しかないような…
でもこれは私が「客観的」立場でみているからで
自分がその中にいないからこそ、そう思えているだけ。
しかし、私も彼らと同じ状況に生きている可能性大だと気が付いた。
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◆この世は皆、暗優模索+疑心暗鬼で生きている
この世界にいきる私たちってのは
みんな実はこの潜水艦の乗組員と同じかもしれない。
あの修復作業中にドカンといった彼らと。
狭くて、暗く、身動きとりづらく
全体を見渡すことができない中
与えられた情報と指示に従い必死に働いている。
全容は分からないけど、不吉なことが起きていることだけは感受できちゃう。
それでも進むしかない故に疑心暗鬼も肥大化していく…
観終った後に「重めの問いかけ」を残していく映画です。
オリヴィア曰く
「私たちがこうして生き残ったこと、生きてここにいる事にきっと大事な意味がある」
そんな気もするし、そうであってほしい気がする。