少年の中のモンスターが目覚めたのではなく・・
両親に翼をもがれ地獄におとされた天使なのでは・・・
とにかく少年が天使のように美少年です。
子供というのは
大人の世界をよーく視ているのです。
しかも実は理解している。
そんな大人の造った冷たい世界、
両親がつくった冷たい家庭の中で
心が凍ってく少年が
成人して独裁者なってしまう話です。
原題を直訳すると「独裁者の幼少期」というような表現なんだとか・・
そっちの方がストーリーにあっているかも。
少年が周りの大人たち、大人の造った世界に失望していく様子が
心にチクチクくる作品です(;;)
- 1918年ベルサイユ条約締結のためやってきた米国政府高官家族
- 冷たい屋敷の中で翼をもがれていく少年天使
- モナを奪われ少年は怒りの中で愛と信仰を捨てた
- 新しい時代・私生児プレスコット
- 少女のような装いは父のためだったのかも
- 子供の頃の両親との関係が「心」をつくる
1918年ベルサイユ条約締結のためやってきた米国政府高官家族
実話ではなく
この後あらわれてくる世界の独裁者たちを
この少年1人に投影しているようです。
幼少期の環境がどう心理に影響を及ぼし
独裁者を生んでいくのか?
の1つの仮説みたいなものかな。
冷たい家庭、冷たい館に閉じ込められている美少年プレスコット
その家族を紹介します。
■少年の父:米国政府高官
ベルサイユ条約締結のためフランスにやってきた米国政府高官の父
妻子を伴い郊外の大きな屋敷で任務完了まで過ごしている。
仕事に忙しく家に不在がちで
子育ては妻にまかせっきり。
息子の反抗的態度に手を焼くが、妻には2人目の子供を求める。
今度は女の子が欲しいと言う。
■少年の母:信仰心熱く躾に厳しい
信仰心熱く、息子をつれ足しげく教会に通う。
4か国語を話し、教師を夢見ていたが
元夫に熱烈に求婚され結婚。
息子の出産時に死ぬ思いをしたことで2人目の子を望んでいない。
美人で頭のいい女性だが息子の世話は家庭教師とメイドにまかせっきり。
家では自室にこもりがちで息子とは距離をとっている。
息子の躾には非情に厳しい態度で臨む。
たぶん・・・夫を愛していないし、息子も愛していないし
今の自分の生き方も愛していない。
結婚前は世界中を旅して刺激を得ていたようで
その経験と知識を活かして仕事で活躍したかった上流家庭のお嬢様。
■美少年:プレスコット
少女と間違えられる程の美しい少年。
父にも母にも心を閉ざし気味でふたりの前では常に暗い表情。
教会では投石したり、
家でも両親に反抗的な態度をとったり、
美人家庭教師の胸を触って叱られたり
問題行動を起こしてばかりいる。
冷たい屋敷の中で年配メイドのモナにだけは懐いている。
■少年の家庭教師の若き美女
将来は教師を夢見る若き美女。
プレスコットの家庭教師としてこの屋敷に通っている。
若く美しい彼女に少年は性の目覚めを感じているようでもあり
優しい母を投影しているようでもある。
■母の友人の記者・文筆家:チャールズ
母の古くからの友人で物書きの男性。
4か国語話せる母も実は物書きになりたかったのかも?
母の良き相談相手でこの屋敷にも頻繁に現れる。
■年配のメイド:モナ
古くからこの屋敷(元は夫婦の姉が棲んでいた)に使える使用人。
両親から放置されているプレスコットをいつも気にかけてくれて
祖母のような優しさで少年を包んでいる。
プレスコットが唯一素直に接し懐いているのが彼女。
母の厳しい躾の際もいつも内緒でプレスコットを助けてくれて
話を聴いてくれる唯一の存在。
冷たい屋敷の中で翼をもがれていく少年天使
少年は全部見て知っていたようです。
- 母が父を愛していないこと
- 母が息子を愛していないこと
- 父が家庭教師の若き美女と浮気していること
- 母が友人チャールズと浮気していること
- 信じて期待しても報われないこと
少年は父と家庭教師の女性がふたりで
ただならぬ雰囲気の場を目にしています。
少年が家庭教師の女性の頬をなで
その手を彼女の胸に置き酷くしかられた時
「母は毎晩触らせてくれる」と言っていましたが
それはたぶん母の浮気現場を見ていたのでしょう(;;)
年配のメイド・モナに優しく気にかけてもらう中で
少年は気が付くのです。
母が少しも自分を愛していないことに。
そうして少年の心の中から
徐々に愛への期待や希望は消えていくのです。
モナを奪われ少年は怒りの中で愛と信仰を捨てた
少年が部屋にこもったり
食事をしなくなったり
両親に反抗的な態度をとっていた理由は
自分とちゃんと向き合って話をきいてもらいたかったからだろう。
なのに父は不在で母ひとりに子育てを押し付け
母は無視するか罰を与える事しかせず
彼に愛情を向けてくれたのはメイドのモナだけだった。
そんなモナを母は解雇し、屋敷から追い出してしまったのだ。
この時から少年の両親への期待、愛への期待は消え
神を信じる気持ちも消えてしまった。
彼の中で「両親、家族、愛、神」が消えた悲しみと
怒りの表現がパーティーの時に
メイドたちがいた窓辺のカーテンにローソクの火が燃え移った
あの炎で表現されている気がする。
この後少年は両親に対して怒りを爆発させる。
愛と期待と信仰を失くし、大人への怒りに飲まれたあと
彼は母を殴り、その後倒れていしまう。
⇓
ポスター/スチール 写真 アクリルフォトスタンド入り A4 パターン1 シークレット・オブ・モンスター 光沢プリント
その時の倒れた様子がこちら
全てに絶望し、父により怪我させられた右手を外に向かって伸ばすが
意識が遠のいていく(;;)
新しい時代・私生児プレスコット
絶望で倒れた後
成人したプレスコットの場面へと飛ぶ。
そのシーンに向かう中で表示されるのが
「新しい時代・私生児プレスコット」のテロップ
多くの民衆に歓迎されながら
登場したプレスコットは「独裁者」となっていた。
それよりも驚くのは
大人になった彼の顔は母の友人チャールズそっくりだったのだ。
母がプレスコットを愛さなかった理由は
不貞の子であり、父への復讐だったためかもしれない。
そもそもが「望まれた存在」ではなかったのか。
父が二人目の子を望んだのも
父が娘を望んだのも
父もまたプレススコットが
自分の子でないことを知っていたのかも。
辛すぎる・・・
しかもどんどん母の浮気相手そっくりになっていく自分の姿・・
地獄か!?
少女のような装いは父のためだったのかも
プレスコットが服も髪型も敢えて中性的というより
少女的にしていたのは
父が「娘」を望んでいたのを知ってのことだったのかも。
でも父意外に「少女」に間違われると
ワザと裸にガウンを羽織って仁王立ちしたり
どこかやっぱり「息子」として認めて欲しかったんでしょうね(;;)
とにかくこんなに寒々しい家族環境に置かれたら
子供の心壊れるって・・・
せめてモナがいてくれたら。
裕福な家で美しい容姿を持ちながら
誰にも愛されずひとりぼっちの少年なんだもの。
子供の頃の両親との関係が「心」をつくる
私が色々見てきたことから察するに
子供の頃に
- 母からの愛情(最後に包んでくれる場所)
- 父からの承認(自慢の子供として認められること)
この2つをどう与えられるかで
その子の心や人に大きな影響がでるようです。
これが与えられないとどこか常に「不安」と「恐怖」を抱えるか
ずっと「満たされない」感覚に支配されてしまうみたい。
またこれが与え過ぎればいいかというと
水を与え過ぎて植物の根が腐ってしまうように
バランスが大事なようです。
「可愛がる」よりも「よく話をきいてあげる」ことのほうが
大事なのかもしれませんね。
子育てってすごく難しくて
親が子供に与える影響がとにかく大きいので
ビビります。
しかも子供は大人のことよく見ているし
敏感なのも恐ろしい・・。
母が小さき者をむげに踏み潰す姿を見たので
プレスコットは孤高のライオンになる決意をしたのかも。
「ライオンとネズミ」の話で「小さき友の大切さ」わかっている子だったのに。
とにかく少年が美しく
絵画のような映画です。