ホラーという紹介文だったけど
ホラーというよりも心をどこに置いて生きるか?
精神世界に生きる孤独な老女の規則正しき繰り返しの日々と狂気
と、いった感じの作品です。
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主人公のANNEと人形たちの
規則正しい繰り返しの日々が
画面でも繰り返されます。
文字の無い絵本のような作品で
主人公のANNEがいっさいしゃべらないので
彼女の現実世界に閉じた心の中を
ただただ想像するしかありません。
ので、私なりにこんな感じかな?と思った部分と
不思議に思う印象にのこった部分で
映画部日記を書いていこうと思います。
- 人形は元々死者の魂を閉じ込める物として作られた
- 現実を捨て精神世界に生きる孤独な老女
- アンと人形たちの繰り返しの日常の様子
- アンと暮らす不気味な人形たち
- アンの吸うたばこの煙が逆流している!?
- 鏡が多く出てくる理由は?
- 家そのものがアンの魂を閉じ込める物だった!?
- アンの見ているスピ系番組「心の希望を」
- 孤独に見えて孤独じゃない老女アン
人形は元々死者の魂を閉じ込める物として作られた
これは映画の冒頭で出てくる
テロップが語っている内容です。
「人形はもともと死者の魂を閉じ込める物として作られた
遺族たちは愛する者が人形として生き続けると信じた」
と、最初に語ってくるのですが
人形にとらわれず「思い入れ」という形と
「残された遺族の想い」に注目して観るといいかもしれません。
現実を捨て精神世界に生きる孤独な老女
戸建ての家に独りで暮らす老女アン。
彼女は人形と暮らしています。
何体もの人形と一緒に生活していて
食事の時も1~2体の人形と毎食一緒にテーブルにつきます。
リビングのソファには人形がズラッと並び座り
彼女と一緒にテレビを見るのが日課です。
でも彼女にはかつて一緒に暮らした家族がいました。
- 夫(家で自から命を絶つ)
- 長男(家を出て不動産業)
- 次男(アンの家の近くに暮らしている)
どうやらアンは夫の死後
心を精神世界に移してしまい
移行体は現実社会にありながらも
心は精神世界に置いて生きているようです。
息子が訪ねてきても
訪問看護師に対しても
他人には無反応で自分の世界を生き続けます。
表情もかえないし
言葉も発しません。
相手の存在を認識しているかも怪しい感じ。
アンと人形たちの繰り返しの日常の様子
アンは深夜(2:26)に目をさまっすと
台所か洗面所に向かい口から大量の血を吐く
コップに吐いたその血を自身で飲み干す。
朝食はシリアルやオートミール
キッチンのテーブルには
一緒に食事の時間を過ごす人形が同席
人形に微笑みかけながら食べる日もあれば
人形に急に怒りの感情を向け乱暴に投げる日もある。
その後はリビングでアンも人形たちも
ソファに座り
みんなでアンがはまっているスピ系テレビ番組を
毎日観るのが日課
夕方から夜にかけては
アンは暖炉の上に置かれた
写真たての家族の写真を
見つめてしばらく過ごす。
※眺めるというよりは見つめる感じ
そして人形の待つベッドに入り眠りにつく。
⇓
夜中に起きて血を吐く
の繰り返し
アンと暮らす不気味な人形たち
どれもみんなどこかが壊れている。
それに謎の名前が付けられている。
名前からアンとの関係性も見えてくる。
- ひび割れ頭
- 性悪女
- 歯痛
- 特権階級
- 眼球
- 色男とつま先
- 脳みそ
- スパイス赤ちゃん
- 呪術師
愛情というよりは
どこか憐みと憎しみが込められた名前である。
名前というよりも呼び名かな。
「ひび割れ頭」は顔面がひび割れた美人顔の人形(闇が深い)
「脳みそ」は頭部がガボッとかけている人形(闇が深い)
「歯痛」に至っては・・・
たぶん本来その人形になかったであろう歯が!
アンが手を突っ込むと出現し、アンがその歯を無理やり引っこ抜くのだ(><)
そして人形にしたのと同じようにアンは鏡を見ながら
自分の前歯も抜くのです・・・
アンの吸うたばこの煙が逆流している!?
アンの身体と精神は客観的に見ると
どんどん病に蝕まれていくように見える。
- 夜中の大量の吐血
- 歯を抜いたり
- 髪を大量に切ったり抜いたり
- 胸上をかきむしって肉がえぐれたり
- 自分の手をまな板と包丁で切り刻んだり
彼女はだいぶ壊れていっている。
でもよ~く見ると
- 人形の抜いた歯を白い紙に綺麗に包んで隠ししまう
- 切った毛束をまた自分の頭の上に乗せる
- 吐いた血をまた飲み干す
など破壊と再生を繰り返しているようにも見えるんですよね。
そこに来ての煙草を吸うシーンなんですよ。
違和感に気が付いてよ~く見てみたら
煙草の煙が逆流してるの!
煙草の煙がたばこや彼女の口に戻っていくのです。
彼女が意図的に自分の生きる精神世界の時間をループさせてる?!
旦那さんの声を聞きたくてループしているように見えた。
夫の死の責任を感じているのかもしれない。
夜中に起きて夫が亡くなった寝室のドアに頭を何度も打ち続ける彼女。
鏡が多く出てくる理由は?
鏡のシーンがけっこうでてきます。
アンにとって人形以外に触れ合うのは鏡の中の自分と
お気に入りのスピ系番組のスピ女だから
鏡に映った自分と対話でもしているのかも。
鏡に向かって表情をくるくる変えるシーンが何度か出てきますが
これも日課なのかもしれない。
鏡の中の自分もまた精神世界に置ける2人目の自分なのかな。
もしくは
あちら と こちら がつながる場所なのかも。
家そのものがアンの魂を閉じ込める物だった!?
これはアンの近所に暮らす下の息子にとってって意味です。
アンによく似た目の下にクマを濃くつくった次男。
どうやらアンと同じく精神が病んでいる予感。
息子から見えている世界もまた
他の人から見えている世界と違ったのです(;;)
現実世界の自分は
自分の意志がなくなってしまうと
あとは誰かの想いがつくりあげた自分になるのかも。
アンの見ているスピ系番組「心の希望を」
ここ、闇が深いようにも感じるし
アンが救われている唯一の存在にも感じる。
番組の宣伝文句を見ていくと
- 奇跡の実話
- 心を豊かにする番組
こんな感じで
この世の半分の黒い部分を全部無視して
白い部分だけに無理やりしちゃう感じの番組です。
奇跡はあなたにも起こる
的な語りかけを画面越しにしてくるの。
これを毎日みるのです。
ここが一番なんかゾッとしました。
孤独に見えて孤独じゃない老女アン
周囲から見ると精神的に病んだ孤独な老女なんですが
アン自身は別に「孤独」に対して恐怖も不安も感じていない様に見えた。
むしろ誰にも邪魔されず
夫との何かを探し続けているようにも見えた。
最後のシーンを見る限り
見つけられたようです。
ただただこの文字のない絵本みたいな映画をつくって
劇場公開した制作陣に感心。
たぶん商業的に成功はしない作品ってわかってやってると思うので。
ただ文字のない絵本と動揺で
こっちの創造力や読解力が求められるので
おもいろいっちゃー面白いのかもね。
たぶん、見る人が好きに解釈してって作品です。
では、また~☆