全ての人に嘘と本当の自分があるように。
善人と悪人の境界線はなく実はすべての人が両方を内包していて
理性でバランスをとっているとして。
破壊し、捨ててきたモノの重要性に気がつき
過去にもどって取り戻したいと願う時。
難解映画として多くの人々の心を掴んできた作品だけあって
面白かったです。
⇓
実はAmazonから「あなたにおすすめよ」ってしつこく
おすすめにでてきた作品なのですが
「この」ポスタービジュアルで見る気がサラサラ起きず無視していたのです。
ところが見ると
このポスターデザインからは想像できない内容でした!
アンドレイ・タルコフスキー「ストーカー」の
米国版SF風ポスターの時くらい中身とのギャップが
この話は作中に登場する本
「タイムトラベルの哲学」の知識がないと細部が
理解できない仕掛けになっています。
そんな監督に意地悪にも負けず
私なりに作品を観ただけの状態での考察多めに
映画部日記書いていきます。
- 世界の終末まで「あと28日6時間42分12秒」のお話
- 「感情は複雑で多様、善悪に分けて単純に扱うものじゃない!」
- 登場人物の持つ二面性が描かれている!?
- 科学が2次性質を置き去りにしたからこそ世界は分裂した
- 人は破壊・手離した後に、失った価値に絶望する
世界の終末まで「あと28日6時間42分12秒」のお話
映画「ドニー・ダーコ」はどんな話の映画なのか?
簡単に説明します。
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主人公ドニー・ダーゴが謎のメタルウサギに
「世界の終りまで、あと28日と6時間42分12秒だ」
と言われてからの28日6時間42分12秒の彼の生き様を描いた映画です。
世界の終末予言をされてること
彼の家に旅客機のエンジンが墜落してくる大事故が起きます。
その日からドニー・ダーコの周りでは不思議なことが起こりはじめるのです。
ドニーの前にしか現れないメタルウサギの声に導かれるまま
彼の行動はどんどんエスカレートしていきます。
精神科に通う17歳のドニー、
もともとの精神不安定さと思春期の周囲へのモヤモヤが
開放された時、破壊の先に彼が望んだ未来が描かれます。
「感情は複雑で多様、善悪に分けて単純に扱うものじゃない!」
私的にこの映画の肝はココかなと思っています。
ドニー・ダーコが怒って抗議した時の言葉です。
人の行ないやその時の感情を
FEAR⇐ーーーーーーーーー⇒LOVE
のどこに当たるか例題カードを読んで
線上に×印を書きなさい。
この課題に対して
他の生徒は一般的な道徳意識にそって
×印をかき教師のご機嫌をとっていくのですが
ドニーだけ「印をかけない」と拒否。
「行動と結果だけ見て
その人の感情をはかることなどできない」
と彼は主張します。
それでも、線上のどこかに印をつけろと言われ
「感情は複雑で多様、2つに分けて単純に扱うものじゃない!」
とドニーは怒りをあらわにするのです。
※ドニーのセリフは正確にはこちらです
FEAR とLOVEを直線で結んだ矢印では測れないといいます。
感情は多数の感情が常に絡み合っており
それを「愛」だの「恐れ」だのひと言で言えないというのです。
私がこの映画の肝がココだと思う理由は
登場人物すべてがその二面性を描かれているからです。
登場人物の持つ二面性が描かれている!?
この映画は映像をよく見ると
気になる点がたくさんあるので
よーく観察すると面白いです。
①ドニー・ダーコ(主人公)
ドニーは以前から精神不安定で精神科に通い
カウンセリングを受けています。
知性的な面もあるのですが、
今は大人たちの建前・偽善で溢れた社会にイライラをつのらせており
反抗的で破壊的です。
破壊は創造のはじまりであり
「すべてが破壊された世界を見たかった」
という気になることも授業中に話しています。
学校の水道管を壊して学校を水浸しにしたり、
破壊的な行動を繰り広げる。
その一方で太っていることでバカにされイジメられている女生徒を
かばったり、落ち込む彼女に「いつか君にも幸せがやってくる」と
そっと囁いたりする面も。
姉とケンカばかりしているかと思えば
彼女のために祝い、パーティーの協力をしたり。
最後の選択では自分の命を捨てて
やっとむすばれた美人転校生の彼女の命を救います。
②ドニーの精神科医の部屋をよく見ると
理解ある包容力と母性を感じさせ、
ドニーに向き合ってくれる頼れる医師なのです。
ドニーを本気で心配してくれてるし。
でも彼女がカウンセリングを行う部屋をよく見ると・・・
ところどころに不気味な置物が置かれているのです。
この人情の顔面部分だけの置物(なかなかの大きさ)
が本棚に飾られていたり
こういった系統の不気味系~魔術系っぽい置物が
部屋の随所にあるのです。
どれも一部だけだったり完全体でないのも気になる・・。
③恐怖克服セミナーのジムの裏の顔
学校でも講師を務める彼ですが
ドニーはジムの無理やりポジティブシンキングが大嫌い。
問題の本質から目をそらし現状を肯定するだけの意識操作だと
堂々とみんなの前で彼に言い放ちます(^^;)
ドニーは彼の家に火を放ち
消防隊による消火活動と現場検証により
ジムの家にあった児童ポルノ収集部屋の存在が明らかに!
その後の報道では「児童ポルノ犯罪グループとのつながり」も・・・。
④ドニーの両親
ドニーの理解者として
問題を起こすドニーをよく受け止めているようにも見える。
でも、どこかドニーに対し距離と壁を置いている風にも見えるのです。
それに両親はドニーに起きている不思議な事に気が付いているようにも見える。
飛行機のエンジンがドニーの部屋に落ちてきたため
航空会社の用意したホテルでベッドに横になりながら
「フランキーは・・ほら、高校の・・死んだろ」
「死ぬ運命だった・・・ドニーも同じかも・・」
と二人が語らうシーンがあるのです。
その言葉どおり、映画のラストでドニーの死に直面しても
母親はこうなることを知っていたかのように冷静で
落ちついた悲しみを見せているのです。
⑤ボケた婆さん:R.スパロウ
いつも郵便受けを覗きにふらふらと歩いては
車にひかれそうになっている不気味な雰囲気の老婆。
実は彼女は大金持ちで
若い頃は宝石収拾が趣味だったという。
ドニーの父は友人達と彼女に家に宝石をさがしに侵入したという・・(悪がき!)
ところがその彼女は敬謙な修道女であった過去を持ち
そこから科学の道に目覚め「タイムトラベルの哲学」
という本を書いた人物だと発覚。
この本に書かれていることを
証明するように話は進んでいきます。
科学に目覚め、時空の謎を追ううちに
「神の存在」が信じられなくなり今のようになったという噂も。
⑥ドニーがイライラする大人な達の嘘と偽善
ドニーの世界の大人たちは
学校の教師たちや生徒の親たち
街の大人たちが中心。
特に学校の教師たちが造る世界が
善と悪でモノを分け
悪をとことん排除しようという意図が強すぎるのです。
そんな世界は嘘だとドニーはイライラしちゃうんです。
だから「破壊された世界を見たい」とかいっちゃうんです。
科学が2次性質を置き去りにしたからこそ世界は分裂した
ドニーが繋ぐ2つの世界
⇓
「タイムトラベルの哲学」ではこんな解釈
しっかりした時空間の主宇宙(真宇宙)があって
めったにその構造が崩れることはないが
時々不安定にゆらぎ「ほつれ」が生まれるらしい。
その時に予備宇宙である接宇宙にシフトしてしまうというのだ。
ただ予備宇宙は不安定で短期間しか持たない。
それが今回の場合「28日と6時間42分12秒」ってこと。
この期間が過ぎると
どっちの宇宙も消失するとされている。
だから選ばれし者(ドニー)が主宇宙へ戻す役割を負わされたというのだ。
そのために予備宇宙内の人は皆、未来人にコントロールされているんだとか・・
ええええええ!?
でも、すべてはドニーが自らの意志で動かないといけないのはなぜ?
はじめからドニーを直接コントロールすればいいじゃん。
と思ったのですが、どうやら未来人がコントロールできるのは
予備宇宙(接宇宙)の中で死んだ人らしい。
私の考察:科学が捨てた2次性質こそ世界の本質かも?
私の最近の驚きの中でも「一番のビックリ」
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この本で科学の歴史に触れてみると
科学というのがものすごく初期・古代の段階で
「世界とは人が感覚で認知しているモノ」と充分理解していながらも、
「宇宙という書物は数学の言葉で書かれている」理路整然とした法則で
成り立っているとしたいがために科学を1次性質と2次性質にわけ
2次性質をバッサリ捨て置くようになったのです。
そこでバッサリ置き去りにされた2次性質こそ
「人が感覚で認知している世界」なのです。
私の考察・感想としては
この映画でドニーが救った世界は
「ドニー・ダーコが認識している世界」だと思っています。
だから彼の意思決定、行動で世界がガラッと変わるのです。
そして未来人とされる(神のような存在)でも
彼の意思を直接はコントロールできないのでしょう。
「彼の認識する」世界だから。
さらにいうと、
この話は「彼が愛する彼女を救うためにリセットした」のではなく
「孤独に死にたくない」という恐れを抱いていた彼ですから
最後は自分の意志で死を選び、
事故死であっても納得して死ぬためだったのではと思っています。
エンジン落下事故で彼が10月2日に死んでいれば
- 愛する彼女
- 母
- 妹
- 姉の彼氏(ウサギのフランク)
- ジム家の火事と没落
これらは食い止められますから。
ジムに関してはどう思っているか謎ですけど。
でも、こう思うんですよ。
「不満に思っていた世界を水浸しにし、火をつけ破壊した結果」
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「やっぱり大事だった」
破壊したけど、そこで見たのは破壊した世界にある大事なモノたち
だからジムが救われたのもドニーは満足なはず。
人は破壊・手離した後に、失った価値に絶望する
「破壊は創造のはじまり」ってよく聞きますけど
あなたが神様でない限り、真に受けないほうがいいよ。
ほとんどのモノは
変化と進化で進んでいますから。
壊すのって簡単だし
破壊行為って自分に全能感もたらすんですけど
破壊の後はやっぱり残骸と沈黙しか残らないんですよね、
人が関わる場合は「怨み」もそこに加わる。
歴史や伝統、文化は非常に大事なので
捨てるのは簡単ですが
取り戻すのはほぼ無理なのです。
真に価値あるモノって
歴史で育まれた伝統、文化の中から生み出されるモノですからね。
金で買える快楽に踊らされていると
この真に価値あるモノをどんどんはぎ取られていくので気を付けて~
自然も同じね。
破壊するのは簡単だけど
育てるには1000年単位、1万年単位でかかる。
「全て破壊された世界を見たかった」ドニーも
破壊前の世界を望んだのが印象深いっす。
実はまだまだ気が付いたことあるけど
この辺でやめておきます。
「タイムトラベルの哲学」出版してほしい。
映画をより理解するためにも。
では、また~☆