カインとアベル、ルシファーとサタンの影がちらつく
「弱き者の怒りの唄」のような映画
「兄は生首を部屋に隠している、数日で新しくなる」
という弟の言葉から始まる
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映画ファウンド~あらすじ
「兄は生首を部屋に隠している、数日で新しくなる、大抵は黒人女性だ」
という弟マーティーの言葉からはじまる。
11歳のマーティーは両親と工場勤務の兄と4人家族
「工場勤務」であることをよく思っていない父と
そんな父に反抗的な兄の仲は最悪…
父は黒人差別主義者でもあり、家では絶対権力者、
母はそんな父に従うのみで兄に手を焼いている
その分、両親とも優等生で聞き分けのいいマーティーを可愛がっている。
だが、マーティーもひとり問題を抱えていた。
勉強はできるがおとなしく
マンガを描くこととホラー映画好きなマーティーは
学校でマーカスというおデブな黒人少年にいじめられていた。
いつも、やられっぱなしで我慢しているマーティーの
ストレス解消法は「人の秘密を覗き見ること」
母の秘密はベッド下の箱に隠された「恋文」、
父の秘密は裸の女の人の写真の雑誌、
そして兄の部屋で見つけたのが…ボーリングバッグに入れられた生首だった。。
この生首は数日で新しいものに入れ替わる。
大抵は黒人女性の頭部。
もし僕が盗み見ていることを知ったら僕も殺されるかも…
そんなことを考えつつも、兄の部屋へ侵入を繰り返す弟マーティー
いじめられ早退してきたマーティーを励ますため
ママがレンタルビデオ店に連れて行ってくれた。
そこで好きなホラー映画を何本か選んでレジに持っていくと
「HEADLESS」というビデオだけ中身が空で借りられなかった。
ところが、マーティーがいつものように兄の部屋に侵入して
秘密を物色していると、「HEADLESS」のビデオがあった。
唯一の友でホラー好きなデヴィッドと一緒に
「HEADLESS」を観てみることに…
しかし、その内容はとてもグロくショッキングな内容で
兄がこのビデオを観て、真似をし生首を隠し持っているんだと確信する。
しかし、このビデオを観たことで
弟マーティーの世界も変わりはじめてしまう。
始まりは「怖がり」とディヴィッドにからかわれ更に
「もう、いじめられっこのお前と友達やめる」といわれ
マーティーが衝動的に兄の秘密を彼に見せてしまったことから。
鞄をあけると、そこに在った生首は
いじめっこマーカスの頭部だったのだ…
ビビるディヴィッドを脅し釘をさしたマーティー
兄の秘密が自分の秘密にもなったマーティー
兄弟はこの後、この無情で非情な世界に立ち向かうべく
行動にでるのだがそれは世界の崩壊のはじまりだった。
※以下、ネタバレ有の感想・考察いきます
外面・表面だけ塗り固められた中身のない世界へのストレス
マーティーは唯一の友人デヴィッドを失い、
母に連れて行かれた教会の集会で牧師の言葉を聞き、
集会にきていた同級生に「ホモ」とからかわれバカにされ気が付く。
"勉強を頑張って、いじめられても我慢してたけど
神様は救ってくれない、神様は信じない”
だからいじめに対して断固たる態度で反撃にでた。
そんなマーティーに大人たちは「相手に謝れ、反省しろ」という。
母も嘆き悲しみ、父は「怪我させた相手に訴えられたらどうする」と激怒。
この世界は形だけ整っていればいいのだ。
「いい子」「いい人」「問題の無い家」「問題のない社会」
「信じていれば神が救ってくれるという姿勢」
心の中では差別主義者でも、それを表には出さずニコニコしていればいいのだ。
この外面ばかり気にする中身のない世界で
形だけ整える為に人々はストレスを抱え込む。
本心とは違う生き方を強いられるから。
そのストレスを発散させるため
「いじめ」や「差別」はより陰湿に、凶暴になっていく。
怒りをぶつける対象が必要なのだ。
「自分より弱い者」か「自分より下の存在」が。
そんな世界で苦しむ自分を救うため
立ち上がったマーティーだが
強く生きようとしただけなのに
思わぬ方向に彼を取り巻く世界が変わっていってしまう。
狂気のビデオ「HEADLESS」
短い作中映画でありながら強烈な印象を残す
狂気のビデオ「HEADLESS」
その内容はマスクを被った狂気の快楽殺人鬼が
女性を縛り切り刻み、首をはね
その切り落とした頭部の首部分をテン〇のようにして
自分のアソコをツッコんで絶頂に…
その後は生首の目玉をスプーンでくりぬき食べるのだ。
…
…
…どうかしてるぜ!?
カインとアベル、ルシファーとサタンのような兄弟
はじめはこの兄弟は「カインとアベル」に似ていると思っていた。
父に可愛いがられる弟、と疎まれる兄
おとなしくいい子の弟と乱暴で凶暴な兄
ところが
兄にとって弟は特別な存在だったのだ。
たぶん殺人鬼と化した兄をなんとか社会につなぎ止めていたのが
人間でいられるというか、守るべきものがあるというか。。
この映画ではカインはアベルを殺すのではなく
自分と弟を「できそこない」扱いする「世界」側を壊そうとする。
ルシファーがサタンになったように
兄スティーブは全身を両親の血で染め
自分の今までの世界を全て壊していく。
兄スティーブは魔物となり飛び立ってしまった。
守ろうとした弟にとんでもないトラウマを植え付けて。
結局は弟に地獄を見せて「愛された弟」に復讐してしまったのかも。
世界というのは一晩でガラッと変わってしまう。
実際にどこかで起こっていることかもしれない。
そう思うとゾッとする映画です。
ちなみに、兄スティーブはこんなにムキムキじゃなかったような…
涙と血が流れまくる
いろいろ考えさせられる作品です。