私個人的にはミッドサマーは結局は「遠い地の文化的習慣」でしたが
こっちは違う!「台風クラブ」が描くのは、日本に漂う陰鬱とした闇と
その陰鬱を敏感に察知して内側で捻じれていく思春期の少年少女たちの狂気です。
彼らの狂気が爆発するきっかけが「台風×夜の閉鎖された学校」なわけです。
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ミッドサマーより身近に潜んでいるリアルな恐怖に感じて
めっちゃ怖かったです。
- ◆映画 台風クラブ~あらすじ
- ◆これを演じきったリアル思春期俳優陣に拍手!
- ◆担任梅宮が三上にかけた「呪いの言葉」
- ◆社会の歪み、陰鬱とした実情とどう向き合うか?
- ◆閉鎖空間×夜の闇×集団の狂気
- ◆監督の狂気:「夢と希望と目標をもって戦い続けよう」
◆映画 台風クラブ~あらすじ
(たぶん長野県のどこかの町)
東京近郊の地方都市を舞台に中学三年生の少年少女が
台風襲来の中、教師の手違いで学校に閉じ込められてしまい
思春期の狂気を解放し、本能のままに暴れる。
優等生の三上君、幼馴染の理恵
優等生の美智子、美智子に恋するも大ケガを負わせた清水
演劇部のやす子とその恋人ユリ
そして演劇部員で担任の梅宮を慕うミドリ
ドジでいつもからかわれ役の明
日中の教室では、抑えられていた感情が
彼らを行動に駆り立てる。
周囲の大人達からこの社会の陰鬱を敏感に感じ取り
心に写りこんだ日本社会の陰鬱と彼らなりに向き合う姿が描かれる。
陰鬱を受け入れ、それに染まることを受け入れる者
大人の陰鬱を断固拒否し、染まらぬ方法を見つけ実行する者
狭い世界から飛び出して外を見ようとする者
台風が去った頃、彼らに大きく変わった明日がくる。
※以下、ネタバレ有の感想・考察です
◆これを演じきったリアル思春期俳優陣に拍手!
監督はこの人だよ~
この映画の凄いところは
本当の「少年少女」達が日本の陰鬱を一身に受けて
爆発する狂気を演じきっていることです。
だから、演じているけど「思春期」なのも「日本の陰鬱」も
「子供を取り巻く大人の闇」も本物なのでリアルです。
彼らの狂気を解放した演技が、「乾いている」ところもリアルでゾクっとする。
聖行為も暴力も友人の死もどこか「どうでもいい」感じで受け止めている。
その姿が本当にリアルなんだよ…
◆担任梅宮が三上にかけた「呪いの言葉」
三上君は早熟だった。
早熟というのは精神面で
ただその成熟度は「哲学寄りに超偏っている」状態だった。
東大生の兄と哲学問答をしてくる父の影響だろう。
どこか文学少年のような危うさを秘めている。
正義と秩序と勤勉を求める表社会と
いい加減な大人達・汚れた社会を見て
日本の歪みが造る陰鬱とした空気に最も敏感に反応してた。
彼の側にいたのが「無邪気な理恵」だったことも
大人社会の闇と理恵の無邪気さがコントラストを強くしたのかも。
”女に貢がせ半ヒモ状態の梅宮先生が授業をしていると
その女の家族が乗り込んできた”
このことが少年少女の思春期の心をひどく揺さぶったようだ。
梅宮とことん軽蔑する三上が
「僕はあなたのような大人には絶対にならない」というと
酔っていた梅宮は三上にこう言い放ってしまう
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『お前だって、あと15年もすれば嫌がってる俺みたいになる』と。
取り繕った表社会と大人達の陰鬱とした闇を
感じとって実は将来に恐怖を感じていた三上君には
この梅宮の言葉は「呪い」となってしまう。
その「呪い」に勝つために三上君がとった行動が…
◆社会の歪み、陰鬱とした実情とどう向き合うか?
思春期の少年少女たちがそれぞれに答えを出している。
台風の日に、心に抱えた「大人達に写された陰鬱」を爆発させたことで
それぞれに消化できたようである。
- 歪んだ世界に自分を合わせ曲げていく者
- 身近な仲間と一緒というだけで安心できる者
- 大人になること=穢れていくことを断固拒否した者
- 息苦しい閉鎖空間から外の世界を見に行った者
- いつもと変わらぬ自分のまま過ごした者
印象的なのは「個」になれたもの
自分ひとりで思うままに行動できた者だけが
あの夜の狂気にのみこまれなかったという点です。
大人になるってことは「個で生きる覚悟をする」ことなのかも。
「完全なる孤独」を受け入れてはじめて
どんな歪んだ世界にあっても心の安定が保てるのかもね。
◆閉鎖空間×夜の闇×集団の狂気
これ本当に危ないんで、この3要素が融合すると
「狂気の異空間=異世界」できちゃうんでご注意を!!
日中保たれている秩序も正義(たてまえ)もふっ飛んで消えてしまう。
集団が創る空気が場を支配しますので、超危険です。
そんで「声の大きな」人の意見に場が染まりやすい。
あと”どうにでもなれ”
って空気に染まりやすいからね~
異空間なので、元の世界に戻ったら帳消し・幻になりそうだけど
そんなことないんやで~
んでな、日本社会ってこういう「異空間」が今も無数に生まれてそうじゃない?
変な集団や組織、団体…多そうなのが怖いところよね。
やたらと愛、絆、信頼、感謝、家族という言葉を使うとかね。
太陽を浴びて、腹に貯め込んだ運子を出せ!
これだけで、だいぶ闇に捕まらなくなるぞ~
◆監督の狂気:「夢と希望と目標をもって戦い続けよう」
私個人的に監督の狂気を感じたのが
台風で閉じ込められた生徒たちが最後に集まった教室
そこに貼ってあったスローガンみたいなデカい紙。
「夢と希望と目標をもって戦い続けよう」
って書いてあった。
これからの人生、もっと戦いは厳しいものになる(死ぬまで戦え)
と云わんばかりじゃないか~(監督の狂気)