「みとのまぐはひ」×言霊
ミトノマグハヒに於いて非常に重要なシーンにはいってまいります。
「天之御柱」を廻り回り 渦の力を得た二柱の神が遂に「廻り逢う」!
では、御柱を逆方向に廻り 再び出逢った二神の様子をご覧ください。
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約り竟へて廻る時に 伊耶那美命まづ「あなにやし、えをとこを」と言ひ
後に伊耶那岐命「あやにやし、えをとめを」と言りたまふ。
(「古事記」より)
日本語は「音のヒビキ」が重要なので、読み音を確認しておきましょう。
”約り(ちぎり)竟(を)へて、廻(めぐ)る時 伊耶那美命まづ「あなにやし、えをとこを」と言ひ、後に伊耶那岐命「あなにやし、えをとめを」と言(の)りたまふ。”
約り竟へて=契を終えて
「竟」=終えて・極める、ついに・とうとう、境、わたる・連なる
”約束通りに 天之御柱を廻り終えて”
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まず先にイザナミ命が声をかけます。
「あなにやし、えをとこを」
(意:ああ、愛しい若君よ)
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続いてイザナギ命が応え声をかけます。
「あなにやし、えをとめを」
(意:ああ、愛すべき乙女よ)
この言葉の掛け合いが重要なのです。
この「言葉の掛け合い」こそ、ミトノマグハヒの神髄らしい。
(※後にこの言葉の掛け合いが生成において如何に重要なことかが示されます)
私が思うに「この言葉の掛け合い」によって、天之御柱を廻り生み出した各々の「渦の力」が融合するのではないか、と。
この各々が生みだした「生成の力の渦」を「合わせる」には、二神の「お互いを讃え受け入れあう宣言」が必要なのではないでしょうか?
これが「二神の生成の力の融合調和を成す」最後の鍵なんじゃないか、と。
ここで気になる「あなにやし」という言葉の意味を解読しておこう。
あなにやし=阿那迩夜志
一般的には「ああ、(感嘆の言葉)」とされておりますが、非常に気になる漢字が当てられております。
- 「阿」=いっさいの字・音声・諸法の本源
- 「那」=美しい
- 「迩」=近い、近づける
- 「夜」=(夕+月)日の入りから日の出までの暗い間
- 「志」=こころざし、心に決めたこと
これを1つの纏まりとして如何に読み解きますか?
私はここに「言葉に根源の力がウツされる」ことの暗示がなされているのではなかと思うのです。ここで「阿」の意が完成をむかえているのかも。
夜志(やし)=原始の暗闇(大深淵の原始の海)と、そこに湧いた根源の意思と繋がる
ことの示しではないかと考えております。
そして「夜=日入り~日出までの闇の間」というのは、我々が根源や異界と繋がりやすい(不安定な)時間(空間場)なのだろうと。
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「阿」がその「夜志」と「那迩(美しく近づく=調和・相似)」するというのです。
つまり、「阿」が示す『いっさいの字・音声』と『いっさいの諸法の本源』と成るべく「夜志」と「那迩」したというわけです。
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根源・本源と繋がった「阿=いっさいの字・音声」から「言葉」を生み出す時、それは既に「造化の第一歩」であり 造化=創造行為そのもの。
ここに「言霊の力」が宣言された、と私は考えるのです。
(つづく)