怒りと絶望を抱え、生きることを諦めた戦争の英雄兵・モルラック
国家侮辱罪に問われ収容されるも黙秘を続ける。
そんな彼のもとに軍判事のランティエ少佐がやってきて…
あなたはどこまで「真実」に辿り着けているだろうか?
少佐の「相手と向かい合う」姿勢に気づかされることが多かった映画です。
映画 再会の夏~あらすじ
1919年 夏
終戦後の平和が訪れたばかりのフランスの片田舎
第一次大戦で活躍が認められ勲章をもらった元兵士モルラック
そんな彼が国家侮辱罪で逮捕され、今は留置所にいる。
黙秘を続け、口をかたく閉ざした彼のもとに
軍判事のランティエ少佐がやってくる。
ランティエ少佐は留置所の前で吠え続ける犬が
ただ一途に主であるモルラックの帰りを待っていると知り
彼の行動には今は誰にも見えていない
何か大きな意図と理由があったのだと察する。
乱暴な看守たちと違い、モルラックにも
人としての敬意をもって接してくれる少佐に
少しずつモルラックも口を開くようになるのだが…
”人殺しを強いられた”とう国への怒り、戦争批判、
モルラックの口から出るのは「戦争への怒り」ばかりだった。
モルラックは国家侮辱罪で処刑されてもいいんだ、という。
彼の怒りと生きることへの諦めには
なにかもっと深い理由があるのではないかと
少佐は彼の恋人だった女性のもとを訪ね話を聞く。
彼女とモルラックの双方の話を丁寧に聞き
紡いで言った時、少佐は彼の怒りの根源にあるモノを理解する。
それはモルラック本人でさえも気が付いていないものだった。
※以下、ネタバレ有の感想・考察となります
◆少佐に学ぶ「人と向き合う」姿勢
少佐とモルラックの名もなき忠犬が交流を深めていきます(;;)
少佐の顔を観て、「あっ!」と思った方も多いでしょう☆
そうあのです、映画「最強のふたり」のあの人なのです!
⇓
今回も「人を見る目」がある役なのです(^^)
面倒な相手と向き合わねばならない時、
ついつい早く用件を片付けようとしちゃいませんか?
(私がそうなんですけど)
なげやりで、ふてくされて、「別に処刑されてもかまわない」って若造の相手…
(ふ~、「あっそう」で片づけたくなっちゃうけど)
少佐は実に丁寧に彼に向き合います。
しかも、めっちゃ独自でも捜査に動きます。
犬があれほどの信頼と親愛を寄せる男なんだから
「何か深い理由があるんだろう」と。
そうして、結構早々に
モルラックの激しい怒りの根源にあるのは
「愛」(愛への絶望)だと気づくのです。
本当に本人さえも気づいていなかった
問題の核心を見つけだし提示したのです(華麗だぜ~)
◆怒りと絶望の根源にあるもの
「怒り」と「絶望」を抱える人の根源にあるのは「悲しみ」なのです。
その悲しみがどこからきているかというと
それは「愛」からきているのです(;;)
- 愛していた人の裏切り
- 受け入れてもらえなかった「愛情」
- 信頼していた人の裏切り
- 勝手に膨らんだ相手への期待が壊された時、自分が否定された気になり「自尊心」(自己愛)が激しく傷つく
こんな時に「悲しみ」にのまれ「自分=無価値」という思いを打ち消すために
『怒り』の炎を燃やすのです。
それが「正義の怒り」なら尚、自己肯定に繋がるわけです。
「怒り」と「絶望」の根源にあるのは「愛の否定」なのです。
それは「自分そのものが世界から否定されたに等しい」ので。
少佐は広場でモルラックが起こした事件を
「彼女への復讐だろ」と静かに指摘、この言葉にモルラックは「はっ」とするのです。
◆信じること=生きる力 (忠犬とモルラックの対比)
怒りと絶望にかられ、生きることを諦めたモルラックに対し
外で彼を待つ「名もなき犬」は”だたひたすらに主を信じて帰りを待つ”のです。
何日も、声がかれるまで吠え待つのです。
”主をひたすら信じる犬 ”と ”愛する人を信じられなくなった人間”
でもあるし
”あきらめない犬” と ”全てを諦めた人間”
の対比でもあります。
面白いのは「信念の強い方」に気持ちが引っ張られ
結局は犬側にモルラックも変わっていくのです(^^)
強い信念は犬でも人でも「現実・周囲を動かす力」あるんだね。
また、犬はモルラックを待つ間「気丈」なのです。
信じることは「生きる力」の源なのかもしれません。
◆「きちんと相手と向き合え」~思い込みで突っ走るな
少佐がモルラックに最後残した言葉
「きちんと彼女と話し合え」
(逃げないで、ちゃんと彼女と向き合え)
モルラックは戦時中の一時帰国の際に
彼女の家に向かい、若い男の姿を観て勝手に誤解してしまったのです。
そして、その場から逃げて以来彼女から逃げ続けていたのです。
事件を起こしたのも「彼女への復讐心」からだったのです。
少佐は全て見抜いていた(凄い)
彼女の口から「新しい恋人ができた」って聞きたくなかったんでしょうね。
なんか気持ちわかるわぁ…最後の通告は受けたくなかったんだよね、たぶん。
全部、間違った思い込みだったわけだけど(^^;
自分で思い込むと「それだけが真実」に見えちゃうので注意しないとね。
色々、心に響いた作品です。