ホラー・心霊映画というよりも
親から虐待を受けながら必死に耐え生きる少女の日々が
とてもリアルでとても怖い映画です。
プライムビデオが「あなたにおすすめだよ~」っていうんで見てみた映画
このジャケット?ポスター?ビジュアルを見ると
悪魔・悪霊系の映画に思えますが中身はちょっと違うぜ~
虐待に苦しむ子の日々、事なかれ主義の教師、
少女の異変に気付いているけど助け出せない見守る大人、
いろいろな人物を通して社会の「虐待」問題への痛烈なメッセージが…
映画 守護天使エンジェル~あらすじ
自閉症のため、生まれてから一度も言葉を発しないハンナ、
彼女はいつも「何か」に怯えていた。
枕の下にはナイフ
眠れぬ夜を今日も過ごすハンナ
彼女は精神的に追い詰められていた。
彼女には双子の姉エンジェルがいた。
だが両親からの酷い虐待の日々の中、彼女は自殺してしまった。
そんなエンジェルの死の真相を隠すために
ハンナは転校させられ、新しい学校へ向かうことに。
エンジェルが自殺した後も
自宅で歯科医を営む両親から
肉体的・精神的な虐待を受けるハンナ。
そんなハンナには秘密があった。
実は亡くなった姉エンジェルの声が聞え
彼女の側に気配を感じていたのだ。
学校では高機能自閉症のハンナの為に
専門の資格を持つエレナ先生が何かとケアをしてくれた。
ハンナと交流する中でエレナは彼女が何かに怯え
問題を抱えていることに気が付くのだが…
両親からの虐待が日々酷くなっていくなか
エンジェルの魂はなんとかハンナを救おうと
自分が話せなかった両親への復讐を果たすため
ハンナに語りかける。
ハンナはこの地獄の日々から抜け出せるのか…
※以下、ネタバレ有の感想・考察いきます
◆彼女は なぜ死なねばならなかったのか?
たぶん、映画を見た人が一番「なんでや!?」と思うのが
ハンナの周囲で唯一彼女のことを親身になって心配してくれた
エレナ先生の最後だと思う。
私も最初は「なんで、どうして?」とザワザワした気分になり
『ブードゥーの呪い』の代償として生贄にささげられたのかな?
とも考えたのですが、
エレナ先生は「虐待社会の闇」のメタファーなんだと思います。
エレナ先生が「虐待社会」の何を象徴しているかというと
- 虐待に苦しんだ子は大人になっても苦しみ続ける精神苦痛
- 虐待されている子供の存在に気が付きながらも助けられない社会・大人たち
- 悪人と闘うには弱き善人では歯が立たない
- 綺麗ごとでは救えない
など、いろいろな「虐待社会問題」の闇を象徴する人物なのです。
エレナとハンナが心を通わせますが
同時に2人を同時に写すことで 何年たっても虐待は社会から無くならない
ということを暗に伝えているのではないでしょうか?
エレナが自分の今後を霊能者の「あの店主」に視てもらい
「大丈夫よ」という言葉を受け、「保障」を得たことで
ハンナを助けに向かう描写もチクリと我々を指す表現ではないでしょうか?
ただ、エレナは息を引き取る前に恍惚の表情を一瞬浮かべて
真っ白い光に照らされているので
彼女にしかわからない「救い」はあったのかもしれません。
◆少女の叫び声が印象的
実はこの映画、作中に直接的な暴力シーンは在りません。
ですが、その分「これから彼女が何をさけるのか」イメージさせる器具が
映し出された後に、彼女の叫び声が響くのです。
これが何度も描かれております。
ほんとに可愛らしく、消え入りそうな少女で
言葉を発しない彼女が唯一声を上げるのが
苦痛に、恐怖に叫ぶシーンだけなのです(;;)
すごく、響くのよ…耳に残るというか…辛い。
◆どうして親が子に虐待するのか?
これって、虐待のニュースを聞くたびに我々もこの疑問が湧くけど
誰よりも実際に親に虐待されている子供たちが
毎日毎日何度も何度もずっと自問し続けている疑問でしょ。
「どうして?」
「私が悪い子だから?」
「私は何かイケないことしたから?」
とか、子供って親に愛されない理由や虐待される理由を必死に考えるはず。
でも、この映画は子供たちの言葉で
そこにある真実を伝えちゃうんです。
ある男の子が虐待され施設に保護された子に対して
「どうして親が子を傷つけ虐待するの?」と質問すると
⇓
虐待されてきた子供はこう答えます。
「(彼らに)理由なんかないのよ」
痛烈で強烈なメッセージでしょ、子供に言わせてるし…
◆虐待する両親の観察
なぜ我が子にこんな酷い虐待を⁉
と疑問を抱きながら観たので
必然的にハンナの両親を観察してしまった(^^;)
そこで気になったところ
- ハンナの母は外面がよく神経質で支配的「思い通りにならない」と感情爆発
- ハンナの父(実の父か…不明)はエンジェルに性的虐待をしていた
- ハンナの父はエンジェルとの関係をしった妻の怒りが子供に向かうよう誘導している
- 両親とも歯科医としいてそれなりにステイタスはあるが、実はどこかに劣等感を感じており弱い存在を支配することで優越感・快楽を得ている
こんな感じでした。
もしかしたらハンナの母も虐待を受けて育ったのかもしれない。
子供よりも夫(男)に興味関心があり、
エンジェルのことがあって余計に我が子でも「女性」としての
存在価値を競っているようでした…母よりも女のサガが強かった。
家庭という内向きに閉鎖された世界は
外面さえ整っていれば社会を騙し続けられる…から怖い。
心に余裕がある時に見てみてね~