大人がみんな「表向きの幸せ」のために罪を犯している罪人のようだ。
モテる男と愛する女、中年男性と彼を愛する14才の少女の重なり合う愛の惨劇。
「自分のすべてをささげる程、誰かを愛したらあかん!」と胸に刻んだ作品。
彼女に恋されちゃうイケメン中年医師のサスペンスかと思った。
骨折からの回復状況確認やリハビリ時に優しく自分の身体にふれ
ものごしの柔らかい大人の男性医師に恋しちゃうのは
彼女が理想の父親を求めているからだろうか?
14才の少女の妄想日記やメールのせいで
患者少女への淫行で逮捕されちゃう中年イケメン医師トマシュ。
※トマシュはなぜか女性たちからモテるので「イケメン」としております。
14才の少女の妄想からはじまった狂言が
絶妙なバランスで「幸せ」を形作っていた医師一家に
大きな波紋をおこしていくのです。
- 父親のような年上医師に恋する14才の妄想少女
- トマシュの家族の不思議な関係
- 作品中に登場する14才~15才の少女たちの影が交差する
- 都合のいい女に優しく、面倒な女は排除する男
- 15年愛をささげた少女と、これから12年間彼を待つ14才の少女
- 人を見極めるには「行動」でみよう!言葉はいくらでも取繕える
父親のような年上医師に恋する14才の妄想少女
このポスターの子やオリンカ
彼女は彼女自身でありもう一人重要な女性の半分を表現もしている。
だからこのポスターは秀逸だと思う。
彼女は2度の骨折でリハビリ医トマシュに優しく触れられるたびに
彼に対して「ひとりの女」として恋してしまったようだ。
彼女は妄想癖があり
物語をつくってはまことしやかに看護師たちに話したりしていた。
彼女の妄想は彼女にとっては半分現実のようなゆらぎの中にある。
トマシュに恋する彼女は彼に愛される女・「アドアリネ」と名乗り
トマシュと自分の愛の物語を日記に書き
アドアリネとしてトマシュに二人の情事のポエムを
メールで送ったりしている(^^;)
とばしてんな、コイツ!
油断ならないのは
このオリンカの妄想日記(ノート)が芸術センスに溢れていること!
物語の創造力といいノートに描くコラージュアートといい
この子・・・芸術家に向いているんじゃない!?
トマシュとの性行為を暗示しているようなその日記には
直接的な表現よりも詩的で幻想的な表現が多い。
ただ「彼の手を自分のパンツの中に導く」とか「彼が何度も私を突く」
みたいな表現もあり、日記を見つけた母が警察へ。
あのエロ医者めぇ!
うちの娘になってことを!!
割と白よりのグレーだけど
「黒じゃない!」と証明できる証拠もなく
捕まってしまうトマシュ。
トマシュの家族の不思議な関係
この一家がまたちょと不思議なのです。
大きくておしゃれなでっかいプールのあるなかなかの豪邸に
- 医師トマシュ
- 妻ミラダ
- 娘テレザ(15歳)
- 義理の父(自宅介護)
- 義理の妹リーダ
- 妻の前夫との息子ダニー(知的障害児)
こういった家族で暮らしている。
代々医師一家である妻の家に婿にはいったような感じだ。
人妻であったミラダはトマシュと不倫の末
テレザを身ごもったことで15年前に前夫と離婚し、
前夫である刑事のラダを追いだしてトマシュを家にむかい入れたのだ。
ええええええっ?!
そしてミラダとラダの息子であるダニーの施設への
送り迎えや世話で元夫婦はお互いに協力し合っている。
ただ知的障害児で身体も大きい少年と青年の間の義理の兄ダニーを
テレザは恥ずかしいと思っていて嫌っているので
昼は施設、夜はパパの家で過ごすことが多いダニー。
元夫のラダは熊系の中年刑事だがやさしく人柄もいい。
ただミラダからは嫌われおり、顔を合わせてはチクリチクリやられている。
義理の妹リーダは歯科医師を目指していたが
それを突如やめピエロとして病院や施設を回っては人々を笑わせている。
リーダは明るく優しくダニーとも仲良く
父親の介護もしている。
ただ元医師で今は介護がないと自由に動けない父は
医師一家の中でリーダが医師の道をあきらめ道化師になったことを
不満に思っていて常に世話をしてくれるリーダに嫌味を浴びせてしまう。
ミラダとリーダの関係は仲がいいともいえないが
お互いにいい距離感をとって協力しあっているようにみえる。
ところどころ、プスプスした小さな火種が見えつつも
なかなかうまいバランスでまとまっている一家に見える。
作品中に登場する14才~15才の少女たちの影が交差する
この作品には14才から15才の少女たちが多く登場する。
- トマシュに恋する14才の妄想少女オリンカ
- 刑事ラダが摘発した強制売春宿の浴室で縛られ下着姿で血を流し死んでいる15才の少女
- トマシュの娘テレザは作中で15才の誕生日を迎えており14才~15才
- 15年前の14才少女のリーダも登場する
あとちょっとだけ、オリンカの友達も出てくる。
この14才・15才の少女たちの生き方というか
その影が複雑に重なり合うので
その点も注意して作品を観て欲しい。
みんなどこか同じで、
みんなどこか悲しい結末にむかっていく。
少女たちの未来と光を奪うのは「大人」なのも同じ。
都合のいい女に優しく、面倒な女は排除する男
トマシュは逮捕前に妻がアリアドネから来たメールを読み
浮気を疑われたことで困惑していた。
「アリアドネなんて知らない、いたずらだよ」と。
そしてトマシュはアドアリネがオリンカだと気が付く。
オリンカを呼び出し、きつめに注意し彼女の好意を拒否する。
口調も強いものだった。彼は苛立っていた。
このシーンが印象的だった。
その理由が後半にわかる。
オリンカの妄想と嘘は彼女の身体検査により
「彼女は処女である」との診断結果終わりを迎えた。
だがオリンカの嘘はもう一人の14才の少女の心を動かしたのだ。
トマシュは当時14才だったリーダと関係をもち
その時同時に人妻ミラダとも関係がありミラダが妊娠したことで
ミラダの2人目夫となった。
しかしトマシュとリーダは一緒に暮らす家でも
人目を忍んで洗濯場などで関係をつづけ
毎年泊りがけで出会った時の水辺のコテージで逢瀬を重ねていた。
コテージの管理人はリーダのことを「トマシュ医師の奥さん」と思っていたほどだ。
リーダはいつかトマシュがミラダと別れ
自分を妻にしてくれると15年間思い続けてきたのだ。
姉の死を願ったりもした。
本当に愛されているのは「私」なのに。
同時に姉や父や家族に対する罪悪感から
罪を償うために医師ではなく人を励ますピエロになった。
更には「モテない男達とねてあげた」とも言っている。
リーダはトマシュに恋する14才の少女オリンカの姿を見たことで
激しい嫉妬と認めたくない事実に気が触れそうになっていた。
リーダはふたりが夫婦として夢の時を過ごすコテージで賭けに出た。
「14才の少女と関係をもったの?どうだった?彼女のフェ〇はよかった?
もう待てない、姉にあなたとの関係を言うわ。父にも話す・・」
突如ヒステリックに自分を攻め立てるリーダに
苛立ったトマシュは
彼女を押し倒し首に手をかけてしまう。
でも殺すことはできず、
その場から逃げ去ってミラダや娘の待つ家に帰ってしまうのだった。
自分を愛する都合のいい女には優しい紳士で接するクセに!
ちょっと面倒なこと(要求)言いだしたら
怒るか逃げるか殺すんかい!?
だから、甘い優しさはうさんくせーんだよ!
甘く優しい奴なんて大概詐欺師か悪魔なんだぜっ
15年愛をささげた少女と、これから12年間彼を待つ14才の少女
なぜ?
トマシュのような見た目と地位はあるが
心はクズ男ばかりがモテるのか・・・・。
事の結末はこうです。
14才から15年間自分をささげつづけ都合のいい影の女だったリーダは
賭けに出たものの彼に捨てられた。
怖かった彼の本心を知り受け入れたリーダ。
でもたぶんリーダは賭けの結果を予測していた。
だから最後の計画を実行したのだ。
彼との情事のあとにわざと
彼を試すようにヒステリックに攻め立て
彼に首を絞められるか暴力を振るわれることまで計画のうちだったとして。
彼女はひとりおいていかれたコテージから
静かに湖にはいり泳ぎ始める。
そして彼女は遺体となって家族の元に返ってきた。
姉への懺悔と彼への復讐だったのかもしれない。
遺体の首に絞めた指後と遺体から精液が検出されたことで
トマシュは再び逮捕される。
今回は証拠がトマシュを「黒」と示していた。
それにトマシュは実際に彼女の首をしめ口を封じようとしたしね。
コテージの管理人のおじさんの証言で15年間に及ぶ二人の関係もばれ
もはやだれもトマシュを信用しないから。
こうしてトマシュは12年の禁固刑になった。
オリンカはまた妄想ノートにトマシュへの愛をつづっている。
ノートに「12年あなたを愛しながら待てるわ」と書くオリンカの姿は
いつしかリーダの姿に変わっていた。
終わり。
愛ってやっぱり狂気やないかぁ!!!
純粋な愛という名のめちゃくちゃ歪みまくった愛は
ブラックホールのように内向きの重力で激重になってまうのかぁ。
このブラックホール愛で、
お前のこと消したろか!?
女の愛と女の15年なめんなよ!
人を見極めるには「行動」でみよう!言葉はいくらでも取繕える
本気で思っているなら即行動に移すわ!
人の本心は行動に全て現れるのよ。
行動こそが意志の最終決定なんだから。
見返りを求め自分をささげつづける愛はやめた方がいいよ。
たぶん、搾取されて終わる。
「無料でくれるからとりあえずもらっとくわ」
みたいな扱いされるだけだから。
ふたりの関係、二人の時間がほぼセック〇で占められているようなら
神聖な愛よりも動物的な愛でありその場の快楽だけ共有する関係なのかもね。
発展的な関係じゃなさそう。
「愛」って人の心を動かしやすいから
愛を軽んじる人ほど道具として使いこなしているのでご注意を。
さすがチェコ映画だなぁ
では、また~☆