①②でコーヒー市場の仕組みと「そこで何がおこなわれているか」に
触れてきました。今回はこの「支配者と奴隷」のような構造のコーヒー市場を
変えようとする側の人たちの活動の方を詳しく見ていきます。
その内容に世界経済・世界貿易のカラクリとリアルを教えられた
ドキュメント映画「おいしいコーヒーの真実」
今回は感想・考察③となります。
私たちが安くておいしいコーヒーを飲める秘密が描かれています。
コーヒーを愛飲している方は是非一度見てください。
①と②はこちら
忙しく毎日長時間働いても
生活が豊かにならない仕組みが理解できる
この世界経済への叫びを克明に刻んだドキュメント映画。
①、②で原産国エチオピアのコーヒー生産者たちの貧困と
コーヒー市場の支配者や価格の決め方をみてきました。
ここからはこの現実に立ち向かう
この状況をなんとか変えようとする側の人たちの
活動にグッと寄っていきます。
- エチオピアのコーヒー生産者組合が目指すところ
- イタリアのイリーカフェ名誉会長のインタビュー
- エチオピアのコーヒー生産者たちが手にするお金
- シモダ地区を襲った飢餓
- 次回予告:コーヒー生産をやめる生産者たち
エチオピアのコーヒー生産者組合が目指すところ
エチオピアのコーヒー農家を貧困から救いたいと言う
オロミア州コーヒー生産者組合の代表タデッセ・メスケラ氏が
実際にどんな取り組みを行っているのか?
政府主催のコーヒー競売会場でタデッセさんが教えてくれた。
会場に集まる仲買人や輸入業者を画面に映しながら
タデッセさんはまず現状の説明をしてくれた。
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◆コーヒー生豆生産者から消費者にコーヒーが届くまで
生産者⇒仲買業者や輸入業者⇒焙煎業者⇒小売店⇒消費者
とエチオピアのコーヒー生産者から消費者に届くまでに
6度の仲介が入るのが現状だという。
中間が増える分、コーヒー農家の手に渡るお金が減らされていく。
そのためタデッセさんは組合を通しての直接交渉により
こういった販路を築くことを目指している。
⇓
組合を通して
生産者と焙煎業者をもっとダイレクトに繋ぐことで
中間コストが約6割削除できるとタデッセ氏は語る。
そうするためにタデッセさんは世界中を飛び回っている。
エチオピアの高品質のコーヒー生豆を携えて
直接交渉に出向いているのだ。
海外のコーヒーイベントに参加しエチオピアのコーヒーを
宣伝・営業もしている。
イタリアのイリーカフェ名誉会長のインタビュー
イタリアのイリーカフェ社はこのドキュメントの
取材依頼に応えてくれている。
実にこの件に協力的な印象だった。
コーヒー市場がこのままではコーヒー豆生産者たちが
消えていってしまうという危機感を感じ取っているからかも。
イリーカフェの取材では
仕入れるコーヒー豆に対するこだわりを
熱く語ってくれた。
エチオピアのイルガチェフェ地域でとれた
エチオピア最高級のコーヒー豆の袋が摘まれた社内の現場を映しながら
「さまざまな生産国から良質の豆を買い付けますが
アラビカ種だけでロバスタ種は買いません。
アロマに劣りカフェインが多いので。」
その後、名誉会長アーネスト・イリー博士が直球で語ってくれた。
この時の言葉がとても印象的なのです。
「私たちは他で代用できない特別な豆を使っています。
ニューヨーク市場で取引される代物とは全く違う豆です」
「投資のための商品など買う気になれません!」
驚いた~(^^;)
めっちゃはっきり言ったよ、この博士!
更に彼は続けるのです。
「エスプレッソ1杯に50粒の豆が必要です。
その50粒すべてが完璧でないと味が台無しになる」
このコーヒーに対する熱いこだわりと職人魂!
数字や儲けより先にちゃんと味がきている(^^)
高い品質を保つことに力を注ぐタデッセさんと同じ心意気です。
それはNY取引所で数字を取引している人からは感じなかった部分です。
エチオピアのコーヒー生産者たちが手にするお金
こちらのポスターに映し出されている
コーヒー豆を選別している女性達。
コーヒーセンターで働く女性達です。
彼女たちが1日8時間この作業により手にする日給は
いくらだと思いますか?
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正解は
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日給は、わずか0.5ドルなんです!
タデッセさんはこういいます。
「今はコーヒー生豆1kgで生産者が手にするのは2ブル(0.24ドル)、
子供にしっかりとした教育をうけさせるなら
1kg10ブル(1.2ドル)での取引が必要になる」
それが最低限の生活を守るために必要だとカメラの前で訴えます。
エチオピア南部のコーヒー農家の男性はカメラの前でこう語ります。
「コーヒーの木が充分に成長するまでに4年かかる、金になるのは4年後からだ」
「コーヒー価格が急落してから生活はホントに苦しい」
「20~30ブルとはいわない、せめて1kg4~5ブルは欲しい」
「息子夫婦は結婚したが家が建てられず
今も私の家で一緒に暮らしている。
子供を学校にも通わせられないんだ。」
その学校ですが、
この地域の子が通う学校では
コーヒー豆の価格が急落後
資金難で黒板1枚も買うことができず
ボロボロに欠けた黒板を今でも大事に使っています。
これがコーヒー生産国の現実です。
私たちが安くておいしいコーヒーを飲めるカラクリでもある。
シモダ地区を襲った飢餓
シモダはスターバックス社へのコーヒー供給地域です。
シモダ産の豆は人気でそのほとんどが西欧諸国に運ばれていきます。
そんなシモダ地域に飢餓が起きていた。
ボリチャ栄養治療センターの関係者の話では
- シモダ地区での飢餓は初めて
- 他のセンターではここ2週間で200人の子供を収容した
この地域では
どんどん子供たちが弱ってきているという。
その根底にあるのは
コーヒーの収穫量も落ち、前よりずっと安い価格で売らなければならなくなったことで
コーヒー農家は再びどん底の生活を余儀なくされている。
そのため子供たちがどんどん弱っていくのだという。
自然・天候による飢餓ではなく人的要因ではないのか!?
この現状にあっても
コーヒーで儲けている人達は何も手を差し伸べてはくれない。
だからこそタデッセさんは動いているのだ。
フェアトレードしてくれる輸入業者をたずねては交渉・営業をしている。
タデッセさんはこの日
ロンドンのサイモンのフェアトレード輸入業者と交渉していた。
次回予告:コーヒー生産をやめる生産者たち
今回も長くなってしまったので
次回につづきます。
もう生活が限界にきているエチオピアのコーヒー農家たち。
だんだんとコーヒーから違う「あるもの」へ生産を切り替え始めているのです。
私はてっきり「やっと穀物の生産するのかな?」
と考えの浅いことを思ってしまたのですが
このことがきっかけで
「そもそもなぜ自分たちの食事になる農作物をつくらないのか?」
という根本に抱えてきた疑問のこたえを得ることができました。
次回は変わるコーヒー生産者と世界貿易会議の恐ろしい弱肉強食の様子を
お伝えしたいと思います。
コーヒーを飲む時
最近は複雑な気持ちです。
では、また~☆