まったく予備知識なしにみた映画「アリソン」は
恐ろしい事件の被害者女性のドキュメンタリーだった。
映像で再現された事件の様子に呼吸困難になりそうになる作品。
これを彼女は体験し、乗り越えたなんて・・・。
私は田舎育ちでドラマや映画好きな母の影響で
「水戸黄門」的な勧善懲悪な世の中に生きていると長く信じ込んでいた。
かなりこの断片的なイメージ世界に長くいたので
そこから出て自分の目で自分の感情抜きに現実を見てみたのは
数年前のことだった。
夢から覚めて、見つめ直した時
現実社会で生きるという事は「サバイバル」だとわかった。
戦略も戦術も必要だし、何よりも情報が大事だ。
人は頭の中では理想を掲げながらも、
行動は実に本能に正直なので何だかんだ言っても
2:8で人は理性的というよりも本能的に生きていると思う。
そう思う今だからこそ
「アリソン」のような壮絶なレイプ被害にあった女性が
世の中に実は多いのではないだろうか?と思っているので
よりこのドキュメンタリーは重く胸に刺さったのです。
普通なら死んでいたであろう状況から
奇跡的に生き返った女性のドキュメンタリー映画「アリソン」。
アリソン自身もアリソンの事件にかかわった人にも
「人の意志の力と行動」がもたらす影響力や
目を背けたくなる現実に立ち向かい受け入れ
前に進むことの壮絶さを教えられました。
でもきっとこの映画は「奇跡」を描いたのではなく
今もどこかで戦っている多くの人の現実の一部を見せてくれたんだと思います。
心穏やかに生きている「今」に感謝を覚える映画です。
本当にあった事件で、今もどこかで同じような事件が起きているかもしれない。
心が混乱しているのでまとまっていませんが
思うとこを書いていこうと思います。
- アリソンは普通の女性で、ある日突然2人の男に襲われた
- 首を斬られ、体外に腸が引きずりだされたアリソンを救った人
- アリソンの闘いがはじまる
- アリソンの語った困難を克服するABC
- 世の中に「特別な人」なんていない、普通の人がいるだけ
- 「傷が癒やされる」ことはない、それは周囲の期待
- 彼女が前に進むためにとったABC
アリソンは普通の女性で、ある日突然2人の男に襲われた
1994年に南アフリカで起こったレイプ殺人事件。
「レイプ殺人事件」と書いたのは
普通なら死んでいた状況だし、再現されたアリソンの様子を見ても
一度は魂が肉体から離れているようだったから。
彼女は一度死んでいる。
そこからものすごい「生きる」という強い意志で戻ってきたのだ。
アリソンはある夜
友人を車で送って帰宅したが
いつもの自分の駐車スペースに違う車が
とまっていたので困っていた。
そんな彼女の車にナイフを持った男が飛び込んできたのだ。
ここから彼女の恐怖がはじまる。
男は慣れた様子で別の男に連絡し、その男を途中で車にので
アリソンをのせたまま郊外のひと気のない山道みたいなところに入った。
そこでアリソンは2人の男にレイプされ
左右の耳までぐるっと首をナイフで斬られ、
腹と恥部を37回もナイフで刺され、
腸を体外に引きずり出されて
裸で放置された。
アリソンは動けなかった。
そして2人の男は車で立ち去っていった。
アリソンは自分が殺されているのはわかったが
もう身体を動かす力も何かを考える力も残っていなかった。
沈黙していた。
だが彼女はこのまま死ぬわけにはいかない!と
「生きる」意志を取り戻し魂が体に戻った。
手をのばし脱がされたシャツを体にかけ
腹をさかれ飛び出た腸の身体を引きずりながら
道路まではって移動したが
もうこれ以上は動けないしどうにもできなかった。
首を斬られ、体外に腸が引きずりだされたアリソンを救った人
道路に横たわる瀕死のアリソンを助けてくれたのは
車で通りかかった青年だった。
かれはアリソンの脈を確認し生きているとわかると
自分の来ていた上着を脱いでアリソンにかけてくれた。
救急車を呼び、救急車がくるまでの間
アリソンの血だらけの手をとり
声をかけ励まし続けてくれた。
病院につくと医師たちがアリソンの姿に息をのんだ。
彼女の左耳から右耳まで弧を描くように
グッと斬られた首の傷を見て彼女が生きていることが信じられない程だった。
大きな血管と神経は奇跡的に切断されていなかったため
なんとか処置できたが、その後彼女の腹部の飛び出した腸に医師たちは困惑した。
彼女の腸は引きずり出され、土や地面に触れていたため
いろいろなものが付着し酷い状態だった。
腸についた汚れをキレイに取り除き
体内に戻す手術と
彼女の切り裂かれた腹部と恥部の縫合。
幸いにも彼女は感染症等起こすことなく
その後時間はかかったが回復していった。
彼女を診察した医師はみな「彼女に子供は望めないだろう」と診断した。
それほど腹部は酷いケガを負っていたのだ。
37回もナイフで刺されたのだから。
アリソンを見つけて一緒に病院にきてくれた青年は
このアリソンとの出会いで「医師」になることを決めた。
アリソンの手術をした医師たちもインタビューに答える形で
このドキュメント映画に登場し当時の話をしてくれている。
アリソンを担当した医師たちも
交通事故やいろいろな患者を診てきたが
あれほどの酷い状態の人間は観たことがないと話していました。
あの状態で生きていたことが本当に信じられないと。
アリソンの闘いがはじまる
アリソンは命を取り留めたが
ここからは苦痛と苦悩の闘いの日々がはじまる。
フラッシュバックするあの日「自分が殺されていく記憶」、
犯人2人の逮捕と裁判で多くの人の前に晒される自分、
やり直せない人生、
これからこの体で生きていかねばならない現実。
現在のアリソンは笑顔の美人だが
こうなるまでにどう生きてきたかを語ってくれています。
首の傷は隠せる位置ではないので
どうしても目が行ってしまいます。
是非、このドキュメント映画を実際にみて彼女の言葉に耳を傾けてください。
アリソンの語った困難を克服するABC
- Attitude・・・・・・態度
- Belife・・・・・・・信念
- Choice・・・・・・選択
これをしっかり持つことで
人生は自分のモノになると教えてくれます。
人生は自分で選べる。
誰かの邪魔されり、
誰かにダメにされたりしないんだと。
世の中に「特別な人」なんていない、普通の人がいるだけ
アリソンのことを「素晴らしい」「奇跡」と言ってくれる人に
出会った時、自分自身の胸に刻んでいる言葉だそうです。
『特別な人なんていない、普通の人がいるだけ、
ただ、時に並はずれたことを成し遂げる普通の人がいるだけ』
奇跡を起こしたように見える人も
普通の人であって、
普通の人が信念をもって
並はずれた努力や苦悩を乗り越えて
成し遂げるまでやりつづけただけだと。
結果だけ見ると「まるで奇跡」に思える事も
その過程は普通の人が積み重ねてきた軌跡なのだと。
「傷が癒やされる」ことはない、それは周囲の期待
これもアリソンがはっきり言っています。
あれだけの恐怖と屈辱と傷を受けて
「癒される」ということは無いと。
ただ「癒されることを周囲が期待している」とも。
でもそんなわけにはいかないんだと。
恐怖の記憶というのは
人の防衛本能的にもしっかり濃く記憶に残り
鮮明に再生される。
これはたぶん二度とその状況に陥らないためのアラーム機能なんだろう。
でもそのたびに心は何度も同じ苦しみを味わってしまう。
「忘れる事」ができないように「癒されること」も無いのだろう。
もっと言えば
現実に起きてしまったことは、「無かったことにできない」だから
「癒されることもない」んだと。
事件前のアリソンではなくなってしまった。
と、彼女がはっきり言っています。
彼女が前に進むためにとったABC
彼女がどうやって笑顔を見せるまでになったかは
この映画をみて確認してください。
やっぱり人との出会いは大きいですね。
99%の人は「アリソンはもう立ち直れないだろうと思った」と彼女は感じたそうです。
でも、
0.1%の人は「立ち上がりなさい」と彼女にいい
0.1%の人は「立ち上がって前に進みなさい」という。
この人たちとその言葉で充分だったと彼女は言っています。
信頼できる一握りの人の存在や言葉がものすごい力となるのでしょうね。
アリソンを襲った犯人2人は
他にも女性を襲っていて
警察にいかないよう脅していたため
被害届を出せないでいた被害女性もいたそうです。
普通の人が普通に暮らしていて
急に他人により地獄に落とされることが現実にあるのです。
こういった現実面もしっかり胸に刻んでおかないとと思いました。
では、また。