この映画…凄い!
マーケティングとかコンサルとか出てくる前なので
映画が観客側にいっさい媚びずにつくられている。
家族でもデートでも友達とでも、ひとりで観ることも想像できない怪作。
映画が映像文学、映像芸術で鋭利だった時代の恐ろしい迫力を感じる作品です。
とにかく、子供の頃に昔話とか絵巻物で刷り込まれた「地獄」のイメージが
そのまんまリアルに映像化されています。
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前半は生き地獄
後半は本当の地獄
どこまでも地獄が続く映画だよ(‘v‘)
この映像化のしかた…監督…狂ってるぜ~
そしてBBA私的にはここに一番グッときた。
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子供の頃に母に見せられたドラマの中で固定されたイメージ…
「明智小五郎とはこの人!」こと
天知茂さんが主人公の青年を演じているのです!!
江戸川乱歩の小説で読む
嫌味で皮肉の利いたでしゃばり明智君とは違い
知的で冷静、それなのにどこか溢れる善人オーラ…
他にも注目すべき役者が…
映画「地獄」あらすじ
仏教系の大学に通う学生:清水四郎(天知茂)は秀才で
同大学教授の矢島先生のひとり娘で美人のユキコと婚約も決まり
順風満帆に人生が進んでいるように思われてた…
だが最近、四郎はある男の存在に悩むようになっていた。
自分に付きまとう同級生の田村という男に…
いつも突然現れては不気味なことをつぶやく田村
矢島先生のお宅にあいさつにいった時も
田村は突然現れ
気乗りのしない四郎を車で送ると言いだした。
田村の車での帰宅途中
酔っ払いの男を車ではねてしまう…
あまりのことに驚いた四郎だったが
「戻って救急車と警察に連絡しよう」と田村に提案するが
田村に拒否されてうやむやなまま罪悪感を抱え日々を過ごす。
ここから四郎の生き地獄がはじまる。
罪の意識を背負いながら生きる四郎の前に
車でひき殺した男の情婦と母親が復讐に現れたり
婚約者のユキコを事故で亡くしたり
「母キトク」の知らせに急ぎ田舎に帰るも
田村が現れ
ここでも周囲の人を巻き込んで地獄の展開に…
そうして
父の経営する養老院の10周年祝賀会の宴が
夜の9時を迎えた時
四郎も四郎の周囲の人も皆が死の淵をさまよう事態に
死の間際に、地獄に落ちる幻想を観た四郎は
その中でユキコに出会い実はユキコは妊娠しており
生まれることができなかった四郎の娘もこの地獄におり
彷徨っていることを聞かされる。
自分の娘:春美(はるみ)を探しながら
地獄を彷徨う四郎は
そこで八大地獄の責め苦を体験していく
地獄でも四郎を追い回す田村の正体とは…
悪魔・田村に追われる「生き地獄」が酷い
悪魔で死神のような田村に付きまとわれた四郎…
そこからの不幸の連続が酷過ぎる(;;)
善人の心を持ちながら
周囲の人間を自分の意思に反して
事故でどんどん亡くしていくのだ…
事故だけど、その死はいつも四郎がきっかけだったりする。
田舎に帰れば
母は衰弱死寸前で
父は愛人を家に囲って母の隣の部屋でイチャイチャ…
父の経営する養老院でも死の影が漂っており
父の周囲の人も悪人でクズばかりなのだ…
そんな中、心を閉じているのに
四郎に寄ってくる人たち
愛情だったり、憎しみだったり、復讐心を持って
寄ってくる人達とどんどん不運の沼にはまっていく
田村の狂人ぶりが凄い!
日本の地獄を描きながらも
田村という悪魔の存在が四郎や観客を支配しているのだ。
悪魔で死神でもある田村を演じる俳優さんの
気持ち悪い表情や演技が光っております…
そうはいっても
やはり日本生まれの悪魔だからか
田村も田村自身の地獄の苦悩から生まれているというのが
ミソかもしれません…
悪魔を生み出すのは人間だよってか?!
怒涛の地獄映像が凄い!
1960年代の新東宝の攻め方がエグイっす。
CGとか無い時代
地獄のエグイ映像でくるしんでいるのは
生身の役者さんたちなのです…規模でかいわぁ
大道具さんや美術さん、役者さんやエキストラ、
そして血の河を蓮の葉にのせられて流される
本物の赤ちゃん含め全部が凄いっす!
マーケティングやコンサルなんて関係ない!媚びないい映画創り
私の勝手な思い込みですが
日本が「マーケティング」とか「コンサル」というモノに染まってから
社会が生み出すモノも人も「つまらなくなった」気がしております。
市場や顧客を分析し、コントロールすることで
利益や金だけに走った結果
「短命のヒット」や「その場の盛り上がり」だけの
モノが世の中に溢れてパンク寸前のように見える…
この映画「地獄」を観た時に強くそう思わされたんですよ。
観終ってあっけにとられながらも最初に思ったのは
「この映画、誰を対象にして作られたの?」ってこと
- 誰が
- どんな時に
- どんな人と
観に行く映画なのか?さっぱりわからなかったのです。
家族で観る感じでもないし、
デートで観る感じでもないし、
映画好きがひとりで見に行くしては興業的に採算合わなそうだし…
どちらかというと
観客を敵視している感じのつくりに見えるのです。
「お前にこの世界がわかるか?」ってね。
小説や前衛芸術に近いかな??
「ついてこられる奴だけ、ついてこい」
誰かと過ごす時の脇役としての映画ではなく
映画vs観る者の一騎打ちのような映画創りがなされていたように感じた。
大勢に媚びて愛されようとしても「その場限り」で終わり
大勢を敵に回す勢いで勝負にでた方が後々まで残されていくのかも。
また面白い創作で溢れる日本になっていく予感もしつつ
私も何か生み出したい気分になっております。
「大勢に好かれなくていい」ってだけで意欲わくわぁ
では、また~
天知さんの明智君素敵だからみんなに見て欲しい